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世界の記述

2022年8月11日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

多くは放火犯による被害

 スペイン内務省によると、これらの山火事の95%は、自然発火ではなく人為的な放火が原因だという。同国のテレビ局「アンテナ3」は4日、意図的に山火事を引き起こし、有罪判決を受けた服役囚は、現在、国内に15人いると報じた。

 人命の危機を招く山火事の放火犯には、禁錮10〜20年(刑法351条)の刑が科されるのに対し、それ以外の放火犯の場合には、同1〜5年に留まるようだ。現在、服役中の男性は、同局が報じた公判の映像の中で、「車から降りて、マッチを使って火をつけた」と、淡々と語っていた。

 ただ、スペイン警察のルイス・アンヘル・オルガ警部補は、「電話での調査や、行動の追跡はしてみるものの、犯行者を簡単に見つけ出すことはできない」と答えている。

 8月4日には、南東部バレンシア地方の山間で、男性が火をつけ、約1000平方メートルにわたる森林が全焼した。男性は、警察に呼び止められた際、逃走したが、すぐに逮捕された。ズボンのポケットからは、ライターが見つかった。

 この他にも、各地で報じられた山火事の多くが、放火犯によるものだった。今年5月にスペイン中西部サモラで起きた山火事では、ポルトガル国籍の男性が逮捕され、昨年7月に北東部バルセロナ周辺で起きた山火事では、外国人男性が逮捕され、2年2カ月の実刑判決が下された。

 このような人為的な山火事が相次ぐ中、スペイン紙「ラ・バングアルディア」(7月24日付)の取材に答えた気象と環境の専門家、リカール・ミラリェス氏は、自然発火でない原因について、より詳細に語っている。

「41%は、主に農家による不注意な火の始末になるが、25%は意図的な発火、11%は(電気や雷などの)自然現象で、12%は原因不明です」

 25%が意図的な発火と見るミラリェス氏は、「山火事の発火件数は増加しているが、予防対策や消火隊員数が改善された地域では、被害範囲は減少している」とも述べている。

 長年の干ばつに苦しむスペインにとって、山火事はさらなる打撃となる。21年までの過去20年間で、合計230万ヘクタールが焼損したと、同国内務省は公表している。

消防隊員が火をつける事件も 

 フランスでも、今年になってから過去最高となる4万7200ヘクタールの山が燃え、同国内に衝撃が走った。この面積は、パリ市の4倍にあたる。ここでも発火の原因は人為的に行われていたものだった。

 7月21日から1週間にわたり、南仏エロー県周辺で2ヘクタールが燃える山火事が発生していた。この火事を拡大させたのは、37歳の消防隊員だった。27日に逮捕されたこの消防隊員は、犯行の動機について、「興奮とアドレナリンによるもの」と供述している。

 また、検察は、消防隊員が「社会的な名声を求めていた」と話していたことを伝える一方、弁護士は、「(消防隊員は)逮捕されて安心している。説明は難しいが、放火に対する中毒性がある」と語っている。

 フランスの刑法によると、意図的な放火を招いた犯人には、懲役15年罰金15万ユーロ(約2060万円)が科されることになるという。

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