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世界の記述

2022年8月11日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

 昨年8月には、イタリアでも人為的な放火による山火事が発生していた。南西部カンパニア州のモンテサルキオで、畜産農家の男性がライターで草に火をつけいる様子が監視カメラで捕らえられた。また、同年9月にも南部バジリカータ州のポテンツァで、スクーターに乗った男性が山道沿いの草にライターで火をつけている姿が防犯カメラに映っていた。

 イタリアでは、「農家から土地を売却するために、マフィアが意図的に火をつけることがある」と、北西部ロンバルディア州ベルガモのアルベルト・ブリビオ農業組合会長が米ニューズウィーク紙(21年8月25日)に語っている。

 このような山火事問題は、放火犯だけに罰が与えられるわけではない。18年12月には、イタリア北部のコモ湖近くでバーベキューをしていた学生2人が約1000ヘクタールを全焼。意図的な犯行ではなかったものの、周辺住宅の焼失や動物の死などをもたらし、2700万ユーロ(約37億円)の罰金が科されている。

悲しみや怒りの感情の発露に

 放火癖、あるいは放火症というのは、どのようなものなのか。フランス紙ルモンド(7月30日付)の取材に応じた心理学者、ロラン・ライエ氏は、次のような特徴を挙げている。

 「18歳から35歳の既婚男性に顕著。特に悲しみや怒りを抱えている時期に火をつける傾向があります。その悲しさや怒りを考える力が欠けており、(発火を)実行する。性的な興奮とは、違う緊張状態にあるのです」

 スペインのアラバ・レジェス心理学センターに勤める心理学者のビセンテ・プリエト氏は、放火症について、ラジオ局「コーペ」(7月24日放送)でこう述べている。

「放火犯は、火をつけることによって、真の快楽と、気が休まるような喜びを感じます。しかし、放火前は心が不安定であり、火をつけることでその緊張感が解れるのです」

 また、プリエト氏は、山火事拡大の原因について、「消防隊員が関係していることが多い」と指摘。しかし、一般的には「火の近くで常に火を意識し、ボランティアで消火活動に行く人たちもいて、その刺激は彼らにとっての快楽なのです」と語っている。

 森林火災グローバル情報システム(GWIS)が発表する国別の被害状況を見ると、欧州ではウクライナがもっとも高く、次にポルトガル、モルドバ、ロシア、ブルガリア、ルーマニアと続いている。

 日本の林野庁が公表している過去5年間(16年から20年)の日本の山火事状況によると、年間平均の出火件数は1261件で、焼損面積は643ヘクタールに上るという。だが、欧州とは異なり、人為的な放火は、日本ではほとんど報告されていない。

  
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