2024年11月23日(土)

Wedge REPORT

2022年8月26日

信用組合が
ファンドを組成

 地域の金融機関も生き残りをかけた模索を続けている。福島県のいわき信用組合は、信組として初めて投資ビジネスに乗り出している。本多洋八理事長は「地域金融機関の役割は当面の危機対応である資金繰り支援から、将来の成長を見据えた事業の持続可能性を高める本業支援へと軸足を移していかなければならない。その一方で、融資業務だけでは限界を感じているので、独自に10億円の再構築投資ファンドを組成し、県内の旅館が経営する観光ホテルにスポーツジムを併設するための費用として5000万円投資した」と話す。

 兵庫県のみなと銀行は、18年から20歳代後半から30歳代前半の行員5~6人を取引先企業に2年間出向させている。現在の数は、りそなグループ内への出向者を含めて約60人。その狙いは「取引先が何で苦労しているのか、お困りごとの実態を肌感覚で理解し、銀行に戻ってからこの経験を生かしてもらいたい」(同行人事部)としている。

 また奈良県を拠点にする南都銀行は「2030年に奈良県の国内総生産(GDP)を約3500億円増加させる」という目標を掲げ、地域の顧客と経営の意思決定をサポートできる人材の育成を進めている。橋本隆史頭取は「地域の発展に貢献するためには、経営人材の創出が不可欠。外部出向の拡大やトレーニーの派遣、グループ会社間の交流などを通じて成長機会を整備するとともに、副業制度の導入や中途採用の拡大などにより人材の育成を進めている」と話す。

問われる利益と
地域とのバランス

 そこで難しくなってくるのが、地銀など株式会社の形態をとっている金融機関だ。取引先への支援が行き過ぎると、融資した資金が焦げ付いて、銀行としても損失が大きくなる。だからといって、業績が好転する見込みがない取引先の支援を打ち切ると、企業は立ち行かなくなり、地元の雇用にも影響するなど地域経済にダメージを与える。

 地域経済の存続が危惧される現在、地域の銀行には「貸すか貸さないか」ではなく、自らの収益の源泉である地元経済に向き合い、今までの銀行業務の枠を超えて自らが主体的に課題解決に関わっていく必要があるのではないか。地域や株主からもその覚悟が求められている。

 
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