交易条件悪化が示唆する円安継続
図表⑤は輸出物価指数と輸入物価指数の比率で算出した交易条件と円の実質実効相場(以下、REER)の推移を比較したものである。
理論的に交易条件はREERと定義上等しくなることが知られており、REERの均衡水準からの乖離を判断する目安の1つと言われる 。実際、交易条件の急激な悪化とREERの急落が符合していることが分かる。現状のように輸入物価指数が輸出物価指数を大きく上回る展開が続く限り、交易条件の悪化が「半世紀ぶりの円安」をさらに下げる展開へとなり得ることになる。
確かに、現状に目をやれば、商品市況は明らかにピークアウトしているため、ようやく交易条件の示唆する円安トレンドにも出口が見え始めているのは朗報である。この点は23年以降の為替見通しを策定するにあたっては極めて重要な材料と考えたい。
だが、足許に目をやれば1~7月分で貿易赤字が約▲9.4兆円と過去最大に拡がっている。現実の需給環境は直ぐには変わらないため、交易条件が改善に転じても、円売りに傾斜した需給面の地合いが直ぐに解消するという話にはならないだろう。年内は円安続行の上、年明け以降にトレンド反転を探るというのが妥当なメインシナリオになってくるように思う。
もっとも、最新のGDPで「政府が過剰な防疫意識を発揮し、行動制限をかけるようなことがなければ民間の消費・投資(個人消費や設備投資)主導でプラス成長を維持できる」という姿が改めて確認されたことは重要な示唆である。日本が世界と同様のペントアップディマンドを起こし、交易条件の改善を果たすためにも、「ウィズコロナ」の政策がやはり必要となる。
(記事はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)
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