家計消費に基づく「暮らし得指数」
地域別の賃金をその地域の1カ月の消費支出で評価するために、総務省「家計調査」の消費支出額を用いることとする。生活費の評価には、人事院が毎年国家公務員の給与勧告を行うための参考資料として算定する「標準生計費」という指標も存在するが、令和4年4月の推計値では、2人世帯で月額17万8930円が標準的な暮らしの生活費として公表されており、あまりにも低廉な推計となっているため、ここでは2021年の家計調査の各地区の勤労世帯の1カ月の平均の消費支出額を用いることにする。「家計調査」では各都道府県の県庁所在地の調査結果のみが公表されているため、これを用いることとする。
表3では、A欄の最低賃金に基づき、B欄に挙げた1か月の平均消費支出額をC欄に挙げた世帯内での有業人員数(共働きを前提)で賄うために働いた場合に、1カ月に必要な労働時間をD欄に示した。生活のための支出が少なくて済み、かつ時給が高いところが「暮らし得」な地域とすれば、D欄の月間必要労働時間は少なくて済む方が良い(ここでは最低賃金で評価しているので必要時間数がやや長めに計算されている)。
表の右端に月間必要労働時間が少ない順の順位を示している。これを見ると、東京、埼玉、千葉など最低賃金Aランクでも1桁に順位付けされないことが分かる。
1位が大阪で、隣の京都に比して最低賃金が高い割に、1カ月の消費支出がかなり小さくなっている。「暮らし得」度ランキング1桁の地域を見ると、2位が愛知(名古屋)、3位が宮崎、4位が和歌山、以下広島、横浜、福井、長崎と地方もなかなか健闘していることが分かる。
しかし、下位には鹿児島、徳島など地方も含まれている。まさに、賃金と生活費のバランスは都市であるから賃金が高くて得、地方だから物価が安くて得という簡単な法則では割り切れないようである。