2022年10月6日(木)

都市vs地方 

2022年9月1日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 この8月、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、2022年度の「地域別最低賃金額改定の目安について」を答申した。これは、各都道府県において最低賃金(時給)を定め、憲法25条で定められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するものである。

(industryview/gettyimages)

 各地域の最低賃金は、この中央最低賃金審議会の目安に基づいて各地方最低賃金審議会が地域の実情や参考人意見等を踏まえた答申を行い、最終的に各都道府県労働局長が10月頃に決定する手順となっている。このため、最低賃金の額や改定の幅は、都道府県によって異なっている。

今回は、この最低賃金の地域別の違いを皮切りに、都道府県別の賃金、物価を比較し、主に経済面から「どこが居住地として良いか」を考えてみたい。

4つのランクに分けられている最低賃金

 最低賃金を議論する際、都道府県は経済実態に応じてA、B、C、Dの4つのランクに分けられている。表1は2021年の地域別の最低賃金改定状況を示している。表を見るとおおむねAランクの地域から高い順に最低賃金(時間給)が並んでいることが分かる。

(出所)厚生労働省(2022)「令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について」審議会参考資料4:を基に筆者作成 写真を拡大

 この8月の中央最低賃金審議会の答申では、最低賃金引き上げ額の目安について、Aランク31円、Bランク31円、Cランク30円、Dランク30円という金額が示された。結果として、全国平均での最低賃金は961円となり、過去最大の上げ幅となっている。

 答申された改定額については地域別に31円と30円のたった1円の差しかないものの、表1に示された現状での最低賃金の差は東京都の1041円と沖縄県の820円で221円存することになる。週40時間労働であれば、8840円の差となり、さらに1カ月では3万5000円以上の差が生ずる。

 ここで、表1の結果だけに基づいて居住地選択をするならば、Aランクの地域に住んで就業することが望ましくなる。しかし、Aランクの地域の顔ぶれを見るならば、東京、神奈川、大阪、愛知、埼玉、千葉と大都市圏、首都圏の地域であることが分かる。したがって、賃金も高いが物価も高く、特に住居費などを考慮すれば、必ずしも余裕のある暮らしはできないのではないかという心配も残る。

 そこで、各地域の物価水準を考慮して、最低賃金の重みを再評価してみることとしよう。

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