2024年12月4日(水)

日本の漁業は崖っぷち

2013年5月2日

資源回復? 秋田のハタハタ
漁業者の本音は…

 日本で資源回復の成功例として、秋田のハタハタの例が挙げられることがあります(図3)。ほとんど魚がいなくなってしまい、禁漁期間(1992~1994年)を設けて水揚げが再開されています。絶滅近くまで魚を獲りつくされてしまっていた時に、禁漁期間を設定した行政側のご苦労は大変なものであったと思います。前掲の本の中で、ハタハタの漁師の方の話が出てきています。その中には、科学的な資源管理をしていなかったために地域ごと衰退してしまった例が読み取れます。

(要約)「ハタハタが一番獲れなくなったのは、禁漁の2~3年前から禁漁の前の年。これまで周期で獲れないことはあったが、あの時はそうではないと思うな。なぜそういう海になってしまったかと聞かれたって、我々の商売(漁業)のせいだけではない。やっぱり環境が変わって来たのではないか?漁師もバカだから、買う人が来ればなんぼでも揚げて、買い手がいなくなるまで獲った。最終的に傷んでしまって、海に投げた(捨てた)。いま思えば、まあ魚がいなくなったのは罰よ。今の言葉で言えば乱獲だった。禁漁になる前の年なんかはほとんど揚がらなかった」

「その時、行政の方で、これではだめだから休んだらという話があった。三年間の禁漁をやりますよって。私ら漁師が自分で「禁漁しましょう」って旗揚げてやったことではない。行政はその時、猛反発にあった。補償はあったが僅かなもの。私らは自ら犠牲になった。解禁後は獲り放題にしたかというとそうではない。行政の方で漁獲枠を漁協ごとに配分される。ある程度ハタハタは増えてきたのだから、もっと漁師に恩恵を与えるような対策を組んでくれるならいいのだが、頭から管理型漁業だとか行って漁師に対して何も補償がない」

「若い人は気の毒だ。魚はいないし、腕次第で獲れるってこともない。規制、規制でがんじがらめ。自分に後継者はいない。息子は漁師をやらないといっている。農業と同じで、漁師も若い人にはいい仕事ではない」

 藻場の埋め立てにより、ハタハタの産卵場が減ってしまったという環境要因は確かにあると思います。しかし、漁業者自身は、捨ててしまうほどの量の魚を産卵場で待ち構えて獲ってしまえば、乱獲で資源が減ってしまうということを分かっていたのです。産卵場を狙って獲り続けて激減してしまった北海道のニシンと同じケースです。しかし「乱獲」という魚が減った最大の原因が「環境の変化」という魔法の言葉により、原因が曖昧になってしまいました。

 しかも、せっかく(仕方なくでも)禁漁に協力して魚も増えてきたのに、解禁後は獲り放題にさせないと不平を言っているのです。乱獲をして資源を減らしてしまったという自覚がなくなり、加害者が被害者と入れ替わってしまっています。


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