しかしながら、ご説明した通り、世界の水産物の供給が年々増え続けているのとは対照的に、日本では毎年水揚げの減少が続いているのです。「日本は世界第6位の広大なEEZ(排他的経済水域)を持ち、世界3大漁場の一つを有する」という地政学的な内容は変わっていないのに、水揚げが減少しているのだから、日本の漁業には何か根本的な大きな間違いがあるのではないだろうか? と気付くはずです。海の広さが変わらないのに魚の水揚げが、不自然に減っているのですから。
世界で数多くの成功例を見てきている筆者には、ネイチャーで紹介されている例は、自画自賛ではないかと思えるのです。「世界に評価されている」というやり方を続けることで、果たして漁業は本当に良くなるのでしょうか?
米国は政府主導の厳格な資源管理
ちなみにサイエンスに掲載したのは米国の大学ですが、そもそも米国の資源管理は、個別割り当てを徹底してきています。パシフィックホワイティング(タラの1種)を始め、個別割当ての実施後に水揚げ金額も資源も増えている報告が出ています。同魚の親魚の資源量は、1.5百万トンと前年を40%上回り、2013年の資源量は、20年ぶりの高水準になったと算出されています。
米国は、パシフィックホワイティングでの結果が出た2011年のタイミングで、漁獲対象の528魚種にTACを設定する方針を出しています。その後TACは、同様に個別割当てとなっていき、資源と水揚げ金額を増やしていくことでしょう。その内、既に15魚種が個別割り当てに移行しています。米国の資源管理は共同管理などではなく、政府主導の厳格な資源管理政策に基づいて漁業を持続的にさせているのです。
一方、日本では、まるで第二次世界大戦末期の大本営発表のように「日本は負けていない!このままで戦えば勝てる!」といった具合に、「日本の漁業、資源管理はうまくいっているのだ」という、一部の例外を除き、事実と異なる情報が常識になってしまっている気がしてなりません。そしてその犠牲者は、漁業者の皆さんや我々日本国民なのです。
補助金としての税金も投入され続けます。来年はさらに高齢化が進んで行くことも、既にわかり切っていることなのです。漁業においても日本の高齢化は世界では異常なレベルです。多くの水産業で成功している国々は、とっくにやり方を変えており、若い人が漁業に従事し続けています。だからこそ、成功を収めたお手本通りに変えていかなければ、日本の漁業は先が見えてしまいます。