小さな魚まで獲る国は世界にあるのか?
日本では、水産資源管理の不備で多くの魚種が減少しています。主要魚種の1つであるマアジの漁獲量も減少傾向にあります。マアジは1歳で尾又長16~18センチに成長する魚です。ほぼ100%成熟するのが2歳で同22~24センチです。
写真にあるような5~10センチのマアジは産卵できるまで成長せずに漁獲されたものです。しかも小さくても食用になるのはまだ良い方で、実際にはマアジの約3割(2020年・農林水産省)も養殖のエサ向けなど、非食用向けとなっています。小さな魚まで獲る国、それは残念ながら日本のことです。これから、それらの例を挙げて行きましょう。
上のグラフをご覧下さい。ほとんど0~1歳の幼魚の内にマアジが漁獲されていることがわかります。マアジの寿命は5年前後と考えられています。これでは成長して産卵する機会を奪ってしまっていますので、資源量は増えようがありません。
下の写真は小さな甘エビです。皮肉なことに、売り場などで見る幼魚、小さな甲殻類などは国産ばかりです。科学的根拠にもとづく水産資源管理が機能している漁業先進国である北米、北欧、オセアニアなどでは、日本と違い、まだ価値が低い小さな魚や水産物はもったいないので漁獲しません。日本が輸入しているのは、価値も価格も高い輸入水産物です。このため「あれっ?」と思う小さいのは国産の魚介類ばかりなのです。
小さな毛ガニやズワイガニも見かけます。これらのカニはエビのように丸ごと唐揚げにできません。小さなカニはそもそも可食部がほとんどないのです。もっと大きくなってから獲れば良いのではないでしょうか?
オスに比べて小さなズワイガニのメス。セイコガニなどと呼ばれて売られていますが、日本がズワイガニを輸入する北米等は、メスの漁獲を禁止していて、獲れても逃がしています。
漁獲枠がなかったり、漁獲枠があっても大き過ぎたり、または個別割当方式になって配分されていなかったりでは、自分が獲らなければ他の人に獲られてしまうという発想になってしまいます。これを「共有地の悲劇」と言います。
その結果、将来にとって悪いと分かっていても、小さな魚や甲殻類を獲ってしまいます。そして獲れなくなると、さらに頑張って小さくても獲り、さらに減って行きます。これが多くの魚種において全国各地で起こっている悪循環です。