2022年9月27日(火)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年9月4日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 毎年水揚げ量がダウンし、過去最低の水揚げ量を更新するスルメイカ。21年は僅か3万トンになってしまいました。10年~20年の年間漁獲量は27万トンでしたので、如何に激減したかお分かりになるかと思います。

(注)写真は一部加工してあります(筆者撮影)

 

 他国のせいや、水温が低いなど、減った理由の責任転嫁が多い反面、写真のように、自国で生まれたばかりの小さなスルメイカまで、容赦なく獲っている現実を知る必要があるのではないでしょうか?

何尾いるのか?シシャモの幼魚

 国産シシャモ漁獲量減少も深刻です。写真のシシャモは幼魚。1パックの中に一体何尾いるのか分かりません。どれだけ小さな網目なら、こんなに小さな魚を獲ることができるのでしょうか?

(筆者撮影)

 資源保護のために、19年からシシャモ(カラフトシシャモ)を禁漁したノルウェーやアイスランドでは、幼魚がたくさんいる居場所を知っています。しかし資源の持続性を考えて、幼魚は決して獲らずに成熟して大きくなるまで待って獲ります。

 その結果、資源が大きく回復しました。ノルウェーは22年・アイスランドは21年に解禁し、日本をはじめとした輸出を再開しています。

 写真のようにこれだけ小さいと、もちろん卵はありませんし、とても干しシシャモにできる大きさではありません。

 漁業法改正により、これから国際的にみて遜色がない資源管理を行うことになりました。逆にいえば、これまではそうではなかったので、水産資源が減り、魚で生計を立てていたコミュニティの衰退が止まらないのです。これまで国内外の数多くの現場を見てきたので実感します。

 対応策として、シシャモの稚魚の放流を続けるようですが、国内の事象を分析すると、稚魚放流(栽培漁業)により資源量が回復する可能性は(ほぼ)ありません。ノルウェーでもアイスランドでもシシャモの稚魚放流はしておらず、禁漁も含めた数量管理を徹底して必ず回復させています。

 魚の資源が潤沢であり続ければ、小さな魚を獲りたければ一向に獲って構いません。ただ、科学的根拠に基づき、漁業先進国のように漁船や漁業者ごとに漁獲枠が厳格に配分されていれば、経済性を考え、漁業者自ら価値が低い小さな魚を獲るのを自然と避けるようになります。

 小さな魚まで獲ってしまう日本の問題。その根源は、漁業者にではなく、科学的根拠に基づく水産資源管理が行われていないことにあるのです。このためさまざまな魚種で、刻々と手遅れになりつつあります。

 われわれ日本人は、海の中で何が起こっているのかを、知ることから始めなければならないのではないでしょうか?

 
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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