しかし中国のこの企みも結局、4月29日の安倍首相の訪ロによって打ち破られる結果となった。安倍・プーチン会談の後で発表された日露共同声明には、領土問題解決に向けての交渉再開だけでなく、日本とロシアは今後、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を設置することも盛り込まれだが、それは当然、日露関係史上画期的な出来事である。
今まで、日本は唯一、同盟国のアメリカとの間でいわば「2プラス2」の協議を定期的に行って来ているが、今度はロシアとも、このような「準同盟国」的な連携を強めることになるのだ。そして多くの専門家たちの分析によっても示されているように、日露両国がこのような安全保障上の連携を強めるに至ったのもやはり、中国の進める拡張戦略に対する共通の警戒感があってのことであり、日露の「2プラス2」は明らかに、「中国」を強く意識したものである。
日露の「2プラス2」などの連携強化を横目で見て腹の虫がおさまらないのは習近平国家主席であろう。自分こそがロシアと連携して日本を牽制しようと考えているのに、よりによって中国唯一の「準同盟国」を取り込み、むしろ中国に対抗するために安全保障上の連携を始めたのである。就任後に最初にロシアに訪問した習近平国家主席の努力はそれで完全に泡になってしまい、習政権の対露外交の梯子は一瞬にして安倍・プーチンによって外された恰好となっている。
日本は批判に耳を傾けるな
このような事態の進展を見て、習近平主席の悔しさと挫折感がどれほど大きなものであるかは推して知るべしであろう。安倍首相の進めた一連の鮮やかな首脳外交に対して、中国はほとんどなす術もなく敗北に敗北を重ねているだけである。今やアジア太平洋地域における外交戦の大勢はすでに明暗を分けており、日本は中国に対して明らかに優勢である。
まさにこのような背景があったからこそ、中国はメディアなどを総動員して安倍政権の内政と外交のすべてに対する執拗な罵倒合戦を展開しているが、安倍首相のことを「悪魔」だと痛罵するその批判キャンペーンの低劣さにしても、安倍外交の成功をわざと「失敗」だと決めつけてそれを扱き下ろそうとするその病的な異常さにしても、それらすべて、自らの失敗を知りながらもそれを懸命に隠そうとする中国政府の必死の努力であり、悔しさの涙をこらえての負け犬の遠吠えなのである。
日本の安倍政権は当然、中国のこのような低レベルな批判キャンペーンを完全に無視して(中国側の批判キャンペーンに加担しているかのような日本国内の一部のメディアの批判も無視して)、今まで通りの外交路線を強力に進めていけばそれで良い。中国からの批判や罵倒はむしろ、安倍外交の正しさを証明しているだけの話だからである。
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