2022年12月8日(木)

Wedge OPINION

2022年9月25日

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饗庭 伸 (あいば・しん)

東京都立大学都市環境学部都市政策科学科 教授

1971年兵庫県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業。博士(工学)。2007年より東京都立大学都市環境学部准教授、17年より現職。専門は都市計画・まちづくり。著書に『都市をたたむ~人口減少時代をデザインする都市計画』(花伝社)、都市の問診』(鹿島出版会)など多数。

 わが国の都市は常に多くの災害リスクにさらされている。事前予知で対応することの限界を理解し、社会全体でそのリスクに向き合わなければならない。
 『Wedge』2022年10月号に掲載されているWEDGE OPINION「頻発し巨大化する自然災害 日本社会が鍛えるべき「力」とは」では、そこに欠かせない視点を提言しております。記事内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
日本の都市は災害と隣り合わせだ。写真は8月4日に撮影された増水した山形県大江町の最上川 (KYODO NEWS/GETTYIMAGES)

 今年の夏も各地で豪雨被害が発生した。8月の豪雨で東北や日本海側を中心に6000棟を超す住家が被害を受けたことも記憶に新しい。

 近年、わが国では地震や台風、豪雨などの自然災害が頻発しているが、そのたびに問われるのは「なぜ災害リスクが高い土地に人の住む場所が形成されたのか」ということである。

 問いに大きく答えるとすると「都市を拡大する土地が十分になかった」ということに尽きる。わが国ではまず農業が高度に発達し、明治維新以降に工業化が進む。産業が発達すると人口が増加し、その人口を受け止める都市が農地を食いつぶすように発達する。明治維新時の約3000万人の人口が150年間で約1億3000万人まで増え、単純計算で4倍の都市空間が大急ぎでつくられたことになる。自由に使える広大な原野があったわけではないので、あちこちで条件が悪いところに都市がつくられていった。

 頻繁に起きる大雨や小さな地震の経験は途切れることがないので、そのリスクが高い所に都市がつくられることはない。しかし低頻度で起きる大地震や近年に巨大化した豪雨災害は多くの人が初めて経験するものであり、今まで安全だと思っていた所のリスクをあらわにする。

 たかだか150年の間に大急ぎでつくられた都市にはまだまだリスクが高い場所があると考えておいたほうがよいだろう。

 都市計画に期待される役割は、災害リスクが高いところに制限をかけ、そこから住宅を移転させたり、新たな住宅を建てられないようにしたりするということだろう。日本国憲法22条には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転(中略)の自由を有する」と謳われているので、都市計画をむやみに行使することはできず、強い権力をもって移転を促進する方法から住民の自発的な移転行動を促進する方法までが組み立てられてきた。その方法を「住宅を移転させる方法」と、「住宅を移転してもらう方法」の二つにわけて考えていこう。

災害に対応した
都市計画の効果と限界

 前者の方法として、……

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諦めない経営が 企業をもっと強くする
諦めない経営が 企業をもっと強くする

かつては日本企業から世界初の新しいサービスや商品が次々と生み出されたが、今や見る影もない。その背景には、「選択と集中」という合理化策のもと、強みであった多くの事業や技術を「諦め」てきたとの事実が挙げられる。バブル崩壊以降の30年、国内には根拠なき悲観論が蔓延し、多くの日本人が自信を喪失している。だが、諦めるのはまだ早い。いま一度、自らの強みを再確認して、チャレンジすべきだ。

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