2022年9月27日(火)

21世紀の安全保障論

2022年9月1日

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吉富望 (よしとみ・のぞむ)

日本大学危機管理学部 教授

1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。陸上幕僚監部、防衛省情報本部、内閣官房内閣情報調査室、防衛大学校教授などを経て2015年退官。拓殖大学大学院国際協力学研究科修士課程修了、博士後期課程(安全保障専攻)単位取得退学。主著に『防災をめぐる国際協力のあり方』(共著・ミネルヴァ書房)。

 防災と防衛はいずれも災いへの対応だ。前者での災いは災害であり、後者での災いは武力攻撃である。これらの災いは多くの人命に関わるものだが、日本人の防災と防衛への向き合い方には大きなギャップがある。

日本では、「防災の日」に毎年、訓練が実施される(ロイター/アフロ)

 それが如実に現れる時期は、8月初旬から9月上旬にかけてだ。本稿では、9月1日の防災の日、8月6日の広島原爆の日および8月9日の長崎原爆の日における日本人の対応に焦点を当て、そのギャップについて考えてみたい。

災害大国・日本の高い防災意識と対策

 9月1日は、1923年9月1日に発生した関東大震災にちなんだ「防災の日」だ。関東大震災による死者・行方不明者は推定10万5000人であり、この数は明治以降の日本の地震被害としては最大である。

 「防災の日」は、政府、地方自治体を始め、広く国民が災害についての認識を深めて備えを充実・強化することにより、災害の未然防止と被害の軽減に資するために制定された。「防災の日」の前後の1週間は「防災週間」とされている。

 例年、「防災の日」および「防災週間」には全国各地で防災訓練、災害への備えに関する普及・啓発活動などが行われ、首相以下全閣僚が参加する政府本部運営訓練も実施される。なお、「防災の日」には東京・墨田区の東京都慰霊堂で関東大震災での犠牲者を追悼する法要が行われているが、「防災の日」および「防災週間」には今後発生する災害に備えるという性格が色濃く、追悼の意味合いは比較的薄い。

 3月11日にも、2011年3月11日に発生した東日本大震災による犠牲者を追悼する催しが被災地などで実施される。9月1日の「防災の日」と同様に防災訓練、災害への備えに関する普及・啓発活動も各地で行われている。

 わずか11年前に発生した東日本大震災は人々の記憶に新しく、この日に行われる防災訓練などには真剣さが漂う。このように3月11日も、追悼のみならず今後発生する災害に備えるという性格を強く持っている。

 災害大国である日本では、洪水、土砂崩れなどの災害が毎年のように発生し、貴重な人命が失われている。こうした自然災害の発生自体を防ぐことは難しいが、災害によって生じる人的・物的被害を最小化することはできる。それが防災だ。

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