2024年4月19日(金)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年9月29日

機雷戦に適した台湾海峡

 台湾海峡は浅く狭いため、機雷を敷設するのに適した地域とされている。台湾海峡は、長さ約300キロメートル、幅は平均180キロメートル、最も狭いところで130キロメートルである。水深は平均60メートルで、最も深いところでも100メートルしかない。

 海峡の航路は、水深20メートル、幅8キロメートルの帯状に集中している。ここに機雷原を構築すれば、台湾海峡を封鎖することができ、その影響は、廈門(アモイ)、泉州(センシュウ)、福州(フクシュウ)の各港にも及び、中国国内の貿易を混乱させることになる。

 中国の貿易の60%は海路で行われ、海上輸入は世界の海上貿易の4分の1を占めており、中国経済に大打撃を与えることができるというのがマシュー・カンシアン氏の論文の主旨である。

米軍のシナリオとは

クイックストライク-ER(筆者提供)

 米軍は、2019年5月に太平洋ミサイル試射場で、新型の射程延長型クイックストライク-ER機雷の運用試験に成功している。クイックストライク-ERは、従来型の機雷よりも射程が長く、より高い高度から投下できるよう改良されたものだ。翼がつけられ、65キロメートル以上を滑空し、正確に投下位置に到達することができる。

 クイックストライク-ERを用いれば、中国が主張する22キロメートルの防空識別圏の外側から投下が可能だ。GPS誘導装置がついているため、政治決着後の機雷原の撤去にも役立つという利点もある。

 クイックストライク機雷を搭載できる爆撃機は、B-1B、B-2、B-52であるが、B-2やB-52は核兵器を搭載できるため、中国側が核攻撃を受けると誤って判断し、反撃に出る可能性があることから、機雷投下には、B-1B爆撃機が使用される。配備されているB-1B爆撃機は6機で、最大840個の機雷を敷設することができる。日本とグアムの空軍基地の範囲にあり、無給油で台湾海峡を往復することができる。

B-1B爆撃機(筆者提供)

 米軍の爆撃機は、これまでにも幾度となく台湾海峡の中国の防空識別圏を通過しており、中国側は、これまでと同様に武力を誇示していると見るはずである。仮に中国が銃撃してくることがあれば機雷戦を中止し、中国の行動を非難し、国際的な支持を得ることができるだろうとしている。


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