2024年12月23日(月)

勝負の分かれ目

2022年9月29日

 両者の微妙なコントラストが印象的だった。総合格闘技イベント「超RIZIN」(9月25日・さいたまスーパーアリーナ)のメインイベントでプロボクシング元5階級制覇王者フロイド・メイウェザーが総合格闘家の朝倉未来とボクシングルールのスペシャルエキシビションマッチで激突し、2ラウンド3分15秒でレフェリーストップによるTKO勝ち(エキシビションのため公式記録は勝敗なし)を飾った。

メイウェザー(左)の強さにマットへ沈んだ朝倉未来(AP/アフロ)

 試合ではメイウェザーの強さが際立った。2ラウンドに入って相手のパンチを得意の神技的ディフェンスでかわしなから右ストレート数発を的確にヒットさせ、逆に相手から飛び込みながらの右ストレートを被弾する場面も見られたものの全く慌てる様子はなかった。

 2ラウンド終了間際にカウンターで右のクロスを合わせて朝倉をダウンさせた。必死に起き上がろうとした朝倉だったが、足がぐらついてロープにもたれかかり、視線も泳いでフラフラ。立つことができず、続行不可能と踏んだレフェリーによって試合終了となった。

メイウェザーにとっては「エキシビション」

 試合後の会見でメイウェザーは朝倉のパンチを食らったことについて、通訳を介し「これはエキシビション」とあらためて強調すると「全然気にしていない。一発もらったから気にするというようなことはない。世界トップのパンチをもらってきているので全然何てことはありません」とも続け、キズひとつない綺麗な顔で自信満々に言い切った。

 そして試合当日は「3時間ぐらいしか寝ていない」ことも打ち明け「日本の友人に『1回は引っ張って、2回にKOしてほしい』というリクエストをもらっていたのでそれに応えました」と平然と口にした。

 まるで、この一戦が真剣勝負ではなく〝花相撲〟であったかのようなコメントだった。実際にメイウェザーは「(試合中は)真剣になったのか」との質問にも「何のために真剣になる必要があるのか。相手が当ててきたので、ボディーに2発強いのを当て返した」と応じ「それでも(朝倉が)舌を出したりニコニコしていたので、そういうつもりならと、それに返しただけです」と述べている。

 パンチを食らっても〝全然効いてないぜ〟と言わんばかりに余裕の笑みを浮かべながら挑発行為を繰り返していた朝倉の姿勢によってスイッチが入り、フィニッシュシーンへと繋がったことを明かしている。

 これらのコメントは決してメイウェザーの強がりやトラッシュトークの類ではなく、全て本心であり本音であろう。メイウェザーにとって2018年大晦日の那須川天心戦と同じく、あくまで今回の朝倉戦も人々を楽しませる「エキシビションマッチ」としてとらえていたのだ。


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