この3人がウクライナ停戦で同一歩調を取る可能性はまず考えられない。現実的な見立てとしてはバイデンVSプーチン+習近平の構図で推移するだろうが、プーチンと習近平が同床異夢の関係にあることは十分に予想できる。
「中国夢」に立つなら、習近平としてはバイデンとプーチンのいずれか一方が決定的に勝利することを求めないだろう。共倒れが理想であろうし、両者がウクライナ戦争で疲弊することを望んでいるだろう。
第20回党大会を「勝利の大会」とすることで長期政権を確保した勢いを駆って、習近平は11月16~18日にバンコクで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に〝主役然〟として乗り込むに違いない。
じつはタイ外務省報道官は、すでに7月8日の段階で7月初めに訪タイした王毅外相が「突発事態が発生しない限り、11月18、19日にバンコクで行われるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に合わせ習近平国家主席が訪タイする」とタイ側に伝えたとことを明らかにした。「突発事態が発生しない限り」とは思わせぶりな発言だが、おそらくタイ側は3期目入りした習近平国家主席を最大級に歓待する。外交上手で知られるタイであるからには、それ相応の土産を用意していると考えられる。
3期目は決して順風満帆ではない
バイデン大統領が中間選挙に忙殺され、プーチン大統領がウクライナ戦争のドロ沼に足を取られている間に、習近平国家主席は東南アジアを舞台に「中国夢」の地歩を固めている。
だが、習国家主席にとって万事順調に進んでいると見做すのは早計に過ぎる。文革の勝利を謳い上げると共に、「毛主席の親密なる戦友・林彪」を後継者に正式指名した1969年の第9回共産党全国大会の席上、毛沢東は「勝利の大会」「勝利の大会」を高らかに唱えていた。だが、ほどなく権力闘争が発生し、林彪は「反革命分子」として歷史の闇に葬られてしまった。
改めて「全く異なりたる環境と人生観をもつて成る国」を「日本を見るの眼をもつて」ではなく、「世界を見るの眼をもつて」眺めることの重要性を痛感するばかりだ。
日中国交正常化50年、香港返還25年と、2022年は、中国にとって多くの「節目」が並ぶ。習近平国家主席が中国共産党のトップである総書記に就任してからも10年。秋には異例の3期目入りを狙う。「節目」の今こそ、日本人は「過去」から学び、「現実」を見て、ポスト習近平をも見据え短期・中期・長期の視点から対中戦略を再考すべきだ。。
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