2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月29日

 米CSBA上席研究員のモンゴメリーが、4月28日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で、米印が、中国の台頭に対処する最も有効な方法は、海洋国家でないインドが海洋力を増強することではなく、インドが大陸国家として中印国境地帯を中心に陸上兵力を増強し、米国がそれを支援し、中国がそれに対抗するため空海軍力より陸上兵力の増強に努めなければならないようにすることである、と述べています。

 すなわち、最近の米印関係改善の最も重要な理由は、公には言われていないが、中国の台頭である。インドが中国の台頭に対処しなければならない一方、米国は中国の台頭を前にアジア太平洋地域での地位を確保するためには、地域のいまひとつの台頭国と組むのが望ましい。しかし米印関係には、米国がインドに望むことと、インドが最も適していることの間にミスマッチがある。

 米国はインドを新進の海洋国家と考え、期待しているが、インドは海洋国家ではなく、大陸国家である。インドに対する主要な軍事的挑戦は陸からのものであり、インドの陸軍は規模、影響力、予算配分からいって軍で支配的な地位を占めている。

 米印関係の緊密化の目的がアジアにおける力の安定的均衡の維持にあるとすれば、インド海軍の拡大は長期的にわずかの効果しかあげられないばかりか、逆効果でさえありうる。インドが海軍力を増強すれば中国はそれに輪をかけたように海軍力を増強し、インドはそれに対抗しかねるだろう。

 インドは本来大陸国家で中国もそうである。中国が過去20年地上軍の規模を縮小し、海空軍の能力増強に努めてこられたのは、永らく陸からの脅威がなかったためである。

 米国自身がこの傾向を止めることはできないが、ここでインドが登場する。インドは中国に重心を海空軍の近代化から領土の防衛のため再び陸軍に移させることのできるおそらく唯一の国である。


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