プロ7年目で29歳となった吉田はクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでMVPに輝き、日本シリーズでも第5戦で劇的なサヨナラ2ランを放つなど2本塁打を叩き出して敢闘賞を受賞。そして2年連続リーグ優勝を飾ったレギュラーシーズンでも素晴らしい成績を残した。
昨季までパ・リーグ歴代4位タイの2年連続首位打者に輝き、今季は3年連続のリーディングヒッターこそ逃したもののリーグ2位の打率3割3分5厘をマーク。今季打率1位の松本剛外野手(日本ハム)に1分2厘及ばなかったとはいえ、相変わらずのヒットメーカーぶりを見せつけた。
三振数は規定打席に達したパ打者の中で今季最少の41。出塁率4割4分7厘で2年連続のリーグトップを堅持し、昨年に続く個人タイトル獲得も決めている。得点圏打率3割6分7厘はリーグ2位、21本塁打もリーグ4位。さらに特筆すべきところはMLB各球団が打者評価のポイントとして重要視するセイバーメイトリクスの指標「OPS」(出塁率+長打率)が1.008で2年連続のリーグ1位を誇っている点だ。
前出のMLB関係者によれば「吉田に関しては一部メディアから走力と守備力をマイナス評価に上げる指摘も出ているが、打撃でこれだけ驚異的な数字を残しているストロングポイントを鑑みれば〝change(お釣り)〟が出るぐらいに十分相殺される」。
球団は「新戦力獲得」を模索
当たり前の話だが、オリックスにとって主砲・吉田の離脱は痛くないわけがない。とはいえ、仮に今オフのタイミングでMLB挑戦が認められずオリックス残留となれば吉田は来年、順調に行くと国内FA権を取得する。
来年7月に節目の30歳となる年齢面を考慮すれば吉田がMLB移籍を諦めて方針転換し、国内FA権行使によってNPB他球団移籍を模索する流れも可能性ゼロとは断言し切れない。それなら今オフにポスティングを容認し吉田獲得に手を挙げるMLB球団から多額の譲渡金を得られる選択のほうがオリックス側にとっても、そして夢を早期に叶えられる吉田にとっても「ウィンウィン」となる。こうした背景も今オフ、吉田のポスティングによるMLB挑戦が容認されるとみられる大きな理由の1つだ。
ただ、オリックスは吉田をMLBへ送り出すにしても早い段階から新たな戦力補強で穴埋めを行おうと積極的に動き出している。国内FA権行使を決断した埼玉西武ライオンズ・森友哉捕手の獲得だ。すでに森に対して大型契約を用意しFA宣言後、即座に猛アタックをかける準備を固めている。
今季こそ森は右手人差し指骨折の影響で本領を発揮できなかったものの、2019年に打率3割2分9厘で史上4人目となる捕手登録の首位打者に輝いた希少価値の高い〝打てるキャッチャー〟。しかも捕手にとどまらず外野守備に就くことも可能で、指名打者での起用も問題はない。巨人など他球団も森の獲得に名乗りを上げることが予想されるが、球界内では「オリックスが圧倒的に有利」とする向きが大半だ。