10月24日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で、同紙外交コメンテーターのギデオン・ラックマンは、「習近平の中国とグローバル・ウエスト(GW)の台頭」との論説を掲載し、米国は中国との競争に勝つためにGWを頼りにしている、と論じている。
胡錦涛が中国共産党大会から強制的に連れ出される様は、今後の中国を象徴する。今や習近平は全てを掌握し、党の上位は全て彼の忠誠者が占める。バイデン政権の新国家安保戦略が中国を唯一の必然的地政学的挑戦と位置付けたのは正しい。
中国との競争に勝つため、米国は「グローバル・ウエスト(GW)」に頼っている。メンバーは裕福な自由民主主義で米国と強い安全保障上の紐帯を持つ、欧州・北米の伝統的同盟国と日豪等のインド太平洋諸国だ。対露制裁に参加するのもGW諸国である。米国は中国との新冷戦に際し、GWの協働も期待している。
中露の最大の挑戦は軍事的・領土的で、ウクライナと台湾がその最たるものだが、GWは経済的威嚇に対しても一層重要になっている。例えばロシアの対欧州ガス供給停止であり、韓国やリトアニア等中国を怒らせた国への貿易制裁だ。GWは中国が技術をコントロールし世界的に「恐怖監視権威主義」を作り出すことも懸念している。
GW結集の例は多い。先の北大西洋条約機構(NATO)首脳会合には豪州、日本、ニュージーランド、韓国が初めて招待され、戦略文書では初めて中国を脅威と呼んだ。米英豪の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)もそうだ。
経済安全保障については、今や主要7カ国(G7)が主導的存在だ。G7はアジアからは日本のみがメンバーだが、GWのインド太平洋諸国は公式・非公式にG7の重要なパートナーだ。
GWでは、友好的民主主義国を中心とした供給網構築で中国の経済的威嚇への脆弱性を下げる必要性が議論されている。イエレン財務長官はこれをフレンド・ショアリングと呼ぶ。インフラや技術での中国の世界的拡大を押し返す動きもある。
6月のG7サミットは、世界的インフラ投資喚起のために6000億ドル規模の基金創設を打ち出した。しかし、これは10年遅く全く規模が足りない。中国の一帯一路は 2013年に始まり、既に4000兆のインフラ投資を行っている。
GWという新たな同盟を維持するのなら、米国はパートナーに対して、中露への最悪の懸念は正当であることを説得する必要がある。中国共産党大会での出来事は、正にこの説得に資するものである。
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ラックマンらしいタイムリーな「造語」だ。グローバル・ウエスト(GW)というのは、初めて聞いた言葉だが、言い得て妙である。