地元に誇りを持ってもらうべく
エスパルスと連携する
児童へのキャリア教育の足掛かりとしても、エスパルスは〝利用〟され始めている。漁業用の餌料の販売などを行うフジ物産(静岡市清水区)は、冷凍マグロの水揚げ日本一を誇る清水港をPRしようと、これまでも幼稚園や保育園向けに絵本を制作し提供してきたが、小中学校へのアプローチはできていなかった。
そうした中、20年からエスパルスが開催するホームタウン次世代育成プロジェクト「エスプラス」のキャリア教育事業編に参画。地元に誇りと愛着を持ってもらうべく、エスパルスのクラブスタッフとともに小中学校に訪問し、特別授業を行っている。
10月28日には静岡市立伝馬町小学校に訪問。日本の遠洋マグロはえ縄漁を支える同社の事業内容や、マグロの種類や釣り方、鮮度の保ち方について、クイズを交えて伝えつつ、働くうえで必要な力などを児童向けにメッセージを送った。
次世代事業企画室の中川文孝主任は「一企業だけではキャリア支援活動の幅に限界があります。清水で働くことの誇りを子どもたちに伝えることができたのは、地域の縁をつないでくれたエスパルスのおかげです」と話す。
クラブ創設30年を経た今
いかに地域貢献をしていくか
エスバルスが静岡に根付き、信頼関係を築き上げてきたからこそ、地域住民や地元企業の「共感」は深まっている。サッカークラブを生かし生かされるエコシステムが静岡の街では構築されているのだろう。
エスパルスがクラブ創設30周年を経た今、今後の地域貢献のあり方について山室社長はこう展望する。
「『この地域にエスパルスがあって本当に良かった』。静岡の皆さんにそう思ってもらうことが一番の願いです。次の10年、20年も地域と共に成長し、一緒になって課題を解決していくことが、エスパルスに課せられた大きな責務だと思っています」
平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。