2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月1日

 もう一つは、英国が宗主国時代に引いた国境線「デュアランド線」である。アフガンはタリバンだけでなく先立つ政権もこの国境線を承認していない。

米国から用済みとされたパキスタン

 2021年8月、タリバンによる首都カブール制圧の翌日、アフガン国民は「奴隷の鎖を断ち切った」と当時のパキスタンのカーン首相は述べた。タリバンの勝利はパキスタンの軍にとっても勝利であったはずである。

 しかし、この勝利は長続きしなかった。当時、タリバンの勝利に触発されてTTPがパキスタン国内でテロ活動を強化する危険は指摘されたが、今や育てた毒蛇に噛まれる状況かと思われる。

 おまけに、アフガンからの米軍撤退により、米国にとってのパキスタンの価値ははなはだしく削がれ、用済みとされたことは衝撃的であったであろう。バイデン大統領はパキスタンのカーン前首相ともシャリフ首相とも電話会談していない。

 要するに、パキスタンの対アフガン政策は破綻したということである。識者の中には仇敵インドに対する強迫的な執着を脱却すること、アフガンをクライアントではなく独立国家として遇すべきこと、アフガンがインドといかなる関係を持つかについてパキスタンにとって有害でない限り干渉すべきでないこと、など政策の刷新を説く向きもある。しかし、このような議論に軍が説得されるかは別問題であろう。

 なお、米軍のアフガン撤退当時、中国の属国と化したパキスタンと共に中国がアフガンに影響力を行使する構図が生まれるかとも考えられたが、そういうことには全くなっていない。上記の記事によれば、中国のアフガンに対する関心は限定的のようである。

   
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