5月、約1年ぶりにミャンマーを訪れた。昨年は「過熱するミャンマー詣で」の企画で2度ミャンマーを取材したが、その後の変化をみようという試みだ。到着早々、パスポートコントロールの検査官が見せてくれた微笑みは「昨年との違い」の最初の発見だった。昨年は、もっと機械的な対応だった。単に人の違いだけなのかもしれないが、幸先が良さそうに思えた。
韓国人、中国人のハングリー精神
それからは変化の連続。空港内に一つしかなかった両替所がもう一つ増え、町を走る自動車が新しくなっていた。新しくなっても日本車が多いことには安心した。空港から乗ったタクシーには、エアコンが効いていた。去年であればエアコンのついたタクシーに乗ることができれば「ラッキー」という程度の確率だった。道路では高架橋の建設が行われ、信号で車が止まると物売りの人たちがジャスミンの花を売りにくる(車内のバックミラーにぶらさげて香りを楽しむため)のは昨年と同じだが、外国人と見るや「Foreign Investment Law」と書かれた冊子を取り出してきた。
ただ、通りに掲げられた看板などには昨年よりも「SAMSUNG」の文字が目に付くようになっていた。ダウンタウンを歩いていると、LGの襷をかけた少年が、チラシを配っていた。新しくオープンするショップのセールを知らせるチラシだ。「GALAXY」の専門店もできていた。外国人向けの住宅が不足するなかで、韓国のビジネスマンは、数名の社員が共同生活をしているという。それに比べ、日本企業では駐在員を増やしたくても、ホテル並に設備が整った外国人専用のマンション(現地ではコンドミニアムと呼ばれている)が足りないため困っているという話をよく聞いた。韓国人のハングリー精神はやはり見習うべきところが少なくない。
同じくハングリーといえば中国人である。ヤンゴン郊外の農村地区を訪ねたときのことだ。新しく住宅を作っているおじさんに「この辺りは、いつ頃田植えをするの?」と尋ねると、「この辺の土地は、中国人に売ったらしいからもうコメは作らないよ……」。ヤンゴン中心部は不動産価格が大幅に上昇しているが、郊外でも工業団地の建設など、近い将来の開発期待で土地取引が活発化しているそうだ。
ミャンマーでは外国人の土地取得は制限されているのだが、「偽装結婚をして取得しているんですよ」と、ある人が教えてくれた。彼らの所行に対する噂話は、今回もよく聞いた。ずさんな管理で開発が続けられる鉱山の話や、中国の農村では女性が不足しているのでミャンマー人女性を甘言で誘って連れ帰り、子どもを生ませるとお払い箱にする、という話まであった。