2024年7月16日(火)

都市vs地方 

2023年1月27日

認定率に地域的な差はあるか

 厚生労働省「被保護者調査」(令和2年)では、地域別の申請件数と認定件数が示されている。ここから1年間の認定件数/申請件数を認定率として計算し、図3のC→Dの部分について地域的な差があるかを見てみることとする。

 この結果は図4に示されている。分かることとして、全国平均の認定率が88.9%となっており、生活保護の申請のほぼ9割が認められていることがあげられる。もし、この認定が極めて機械的な作業であり、世帯からの申請の水準に差がなければ、認定率にさほど大きな差は生じないはずである。しかし、図4を見ると実際には東京都は95%を超え、逆に福井県では75%を下回る値となっており、地域的な差は最大で20%ポイント以上存在することが分かる。

(出所)厚生労働省「被保護者調査」(令和2年)より筆者作成。認定率=1年間の認定件数/申請件数で算出。 写真を拡大

 図4に示された生活保護の認定率が低いことで保護率も低くなり、いわば窓口でのブレーキが掛けられている可能性があるかを見るために、認定率と保護率の間の関係をプロットしたものが次の図5である。

(出所)図2および図4より筆者作成。横軸:認定率、縦軸:保護率。 写真を拡大

 図5を見ると、認定率と保護率の間には明確な相関は見出しがたい。ここからすれば、「保護率が高くならないように認定率を抑えている」あるいは「認定率が高いために生活保護が大盤振る舞いとなって保護率が高くなっている」という行政側のコントロールは、データの上からは言えないようである。逆に、生活保護の認定は保護率との間では偏りなく行われているともいえる。

申請側に地域的な差はあるか

 図3に示した生活保護受給に至るA→Eのプロセスの中で、少なくともC→Dの生活保護認定の段階では、都道府県間で明確な行政の意図の違いは見い出せず、地域的な偏りのない認定を伺わせるものであった。では、生活保護の申請を行う個人(世帯)の側の意識はどうであろうか。

 これを知るためには、世帯が生活保護を必要とするような低所得に直面した場合に、図3のB→Cの流れとして、どのぐらいの比率で生活保護の申請を行うかを見ることとする。

 初めに、低所得に直面する世帯の指標として、地域別の比較的所得の低い世帯の比率を用いる。ここでは、市町村別の所得まで調査された「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省)のデータを用いて地域別の世帯所得の状況をみる。

 この調査では、世帯の年間収入の階級を300万円未満、300万~500万円未満、……、1000万~1500万円未満、そして1500万円以上と分けたうえで、各階級の世帯数を示している。年収300万円未満の世帯を低所得世帯として、年収が明らかになっている全世帯に占める比率を指標とする。

 次に、申請率として「被保護者調査」(20年)の各地域の生活保護申請世帯数/年収が300万円未満の世帯を計算した。結果は図6に示されている。

(出所)横軸:世帯所得;総務省「平成30年住宅・土地統計調査」 住宅及び世帯に関する基本集計」第42-3表, 世帯の年間収入階級(6区分)別普通世帯数より作成。縦軸:申請率;厚生労働省「被保護者調査」(令和2年)より作成。 写真を拡大

 図6を見ると、年収300万円未満世帯比率が高ければ高いほど本稿で定義した生活保護の申請率が高くなるという傾向はみられない。むしろ大部分の地域は0.8%~1.0%のレンジに分布している。

 ここで注目したいのは、全国平均値1.26%を超える地域である。すなわち、図6に示されている、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県、沖縄県である。これらの地域は、図2の保護率で全国平均を上回っていた地域のうち、北海道、東京都、大阪府、福岡県、沖縄県が重なっている。


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