今後の中国のこの地域への経済面での関与がどのようなものになるかは、次のように分析できる。中国の経済的関与は、①貿易、②公的融資、③直接投資、④プロジェクト受注などの通常ビジネスに分けられる。
貿易面では、地域諸国は重要な市場である中国とのさらなる貿易関係の拡大を望んでおり、台湾承認国はこの面でハンディを負っている。他方、②の公的融資は、西側の「一帯一路」批判が相当浸透したことや中国の経済事情もあり、この地域に対する新規融資はほとんどストップしていると思われる。
中国政府も最近は、一帯一路ではなく「グローバル開発構想(GDI)」を前面に出す場合が多い。この構想はより政府開発援助(ODA)に近い概念であるらしく、所得水準の高いラテンアメリカ諸国は対象とならない可能性がある。
③の直接投資は、欧米への投資が減速している分、ラテンアメリカに流れるという面はあろう。しかし、直接投資の対象は、資源分野、通信、発電など中国側にとってメリットがある分野で、低所得層への社会サービスや都市交通インフラなど、現地サイドの必要性が高いが利益が少ない案件に投資が進むとは思われない。
同様に④の商業ベースのプロジェクト受注も採算がとれるようなものでなければ応札しないであろう。要するに、これまでのような気前の良い中国マネーを期待できなくなる可能性もあろう。
米国とラテンアメリカ諸国の経済協力
以上を考えると、西側や世界銀行・IDBに全く経済面で出番がないわけではない。国によって、また、分野によって工夫の余地はあろう。
その一例を挙げると、最近キャシディ米上院議員(共和党)が提唱した米国とラテンアメリカとの関係強化法案では、同地域の諸国に対し米国・メキシコ・カナダ貿易協定(USMCA)への参加を認めることが中核となっている。これは、中国から部品製造工場を引き上げてラテンアメリカでのサプライチェーンを構築するという発想に基づくものだ。
法案には人材育成のための大学設立なども盛り込まれている。民主党側の反応は不明だが、このような発想の転換が必要であろう。中長期的には、人的資源への投資だけではなく他の手段も加えるべきである。開発援助の観点からは、1990年代の「日米コモンアジェンダ」のような援助協調の発想も有効と思われる。