ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)のオグラディ米州担当コラムニストが、中国のラテンアメリカへの経済進出に米州開発銀行(IDB)が効果的に利用されて来たことを指摘し、対応策を求める論説を、7月31日のWSJに掲載している。
中国は、ラテンアメリカ全域でおとり商法を展開している。2008年の金融危機で資金繰りに窮したIDB に、中国は09年に加入した。IDBは、中国マネーの窓口となり、地域の加盟国と中国の橋渡しをした。IDBは、13年から22 年5月までに、中国との協調融資による91のプロジェクトに61億ドルを貸し出した。
中国は良い開発パートナーではない。確かに、中国は貧しい国々に資金をもたらすが、現地の労働力を雇用したり訓練したりはせず、中国人労働力を持ち込む。
その仕上がりや材料は、しばしば粗悪なものである。過剰な借入れと建設を奨励し、多額の債務は返済不能となる。中国の動機は、この地域で大きな影響力を得ることであり、開発のためではない。
最近、IDBは、台湾を含む新たなパートナーを求め、今年5月、ベリーズに台湾が支援を行う構想が発表された。中国は激怒したが、開発について関心を持つ人々は、中国がIDB から脱退し、ラテンアメリカから去るような行動をとることを期待するしかない。
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この論説は、米国にとり政治的脅威にもなりつつある中国のラテンアメリカへの経済的進出を手助けしたのが、米国の対ラテンアメリカ外交の一つの柱でもあるIDBであることを改めて指摘し、中国への依存を減らすために米国やIDBが何らかの対応をするべきことを主張している。
中国は習近平体制の下、中国の夢と称する中国の政治的な影響力拡大を目指す具体策として一帯一路構想を掲げ、グローバルに展開して来た。米国は、これを脅威として真剣に認識していたとは思えず、中国マネーを用いた途上国への影響力拡大に対しては効果的な対応をしてこなかった。
この論説が指摘するように、ラテンアメリカへの中国企業の進出を助長したのがIDBであるとの指摘には驚かされる。IDBは、過去9年間に91のプロジェクトで中国と協調融資を行い、中国国有企業群がラテンアメリカに進出するビジネスの手ほどきをしたとされる。