2022年10月3日(月)

WEDGE SPECIAL OPINION

2022年8月24日

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久末亮一 (ひさまつ・りょういち)

日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所 副主任研究員

学術博士(東京大学)。香港大学客員研究員、東京大学大学院助教、政策研究大学院大学安全保障・国際問題プログラム研究助手などを経て現職。著書に『香港「帝国の時代」のゲートウェイ』(名古屋大学出版会)など。

 アジア太平洋の経済ゲートウェイとして繁栄してきた「香港」。だが、生殺与奪を習近平が握った今、変容と衰退は避けられない。「Wedge」2022年9月号に掲載されているWEDGE SPECIAL OPINION「「節目」を迎える2022年の中国 日本の対中戦略、再考を」では、そこに欠かせない視点を提言しております。記事内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
 9月29日、日中国交正常化から50周年を迎える。ロシアによるウクライナ侵攻の〝衝撃〟の陰に隠れているが、日本にとっても、世界にとっても21世紀最大の焦点は「中国問題」であることは間違いない。

 2022年は、中国にとって多くの「節目」が並ぶ。

 7月、英国の統治を終えて香港が中国に返還されてから25年が経過した。英中共同声明で「一国二制度」が50年は不変だと理解されてきたことを踏まえれば、折り返し地点を迎える。だが、近年の香港は、香港国家安全維持法の施行をはじめ民主派の活動家やメディアに対する激しい弾圧など、既存秩序の形骸化が著しく進む。そうした現実から目を背け、日本経済の香港依存が続いている。これからも「香港は日本の生命線」であり続けるのか。

 そして日中関係。50年前から今日に至るまで、民主化を求める人々に中央政府が銃を向け「流血の惨事」となった天安門事件など、中国共産党の本質を見抜くチャンスはあった。それでも日本は、「中国がいずれ民主化し自由化する」ことを期待し、関与政策という外交を選択した。だが、軍事的・経済的に台頭し、日本にとって「脅威」となった現下の中国を見れば、その期待は甘かったと言わざるを得ない。こうした教訓を今後にどう生かすのか。

 習近平国家主席が中国共産党のトップである総書記に就任してから10年。秋には異例の3期目入りを狙う。「節目」の今こそ、日本人は「過去」から学び、「現実」を見て、ポスト習近平をも見据え短期・中期・長期の視点から対中戦略を再考すべきだ。
既に「中国」となった香港と、日本人はどう向き合うべきか── (AP/AFLO)

 1997年、香港は1世紀半以上の英国による統治の後、中国に返還された。それから25年を経た現在、香港は根本から変化してしまった。

 返還後の香港は、84年の「英中共同声明」で約された「一国二制度」で、50年間は不変であると理解されてきた。その枠組みは2010年代に入るまで、紆余曲折はありつつも、江沢民から胡錦濤に至る中央政権の慎重なアプローチもあって維持され、香港は返還前と同様に、アジア太平洋の経済ゲートウェイとして繁栄してきた。

 しかし、12年の習近平政権発足以降、その前提は崩れた。14年と19年の大規模な反政府・民主化運動は、自らと中央の権威への反抗を決して許さぬ習近平を刺激し、それまでのバランスは崩壊した。もはや中国は「英中共同声明」を過去のものとし、自らの主権下にある香港の「一国二制度」の定義・解釈を当然の権利と考えている。

 そして近年、香港国家安全維持法の施行、民主派の活動家やメディアへの徹底弾圧、「愛国者による統治」と称する警察官僚主導・親中派独占の政治、司法の親中化と独立性の減退、各種デモ・集会の禁止・自粛などが示すように、政治、言論、社会の自由は、中央の意向に沿って急速に狭められ、香港は大きく変容した。

 表面上は「平穏」を取り戻し、核心の経済活動も相変わらず活発に見える。だが、私たちはそれに惑わされることで、この10年で発生した根源的な変化と、それが及ぼす今後への負の影響を、見誤ってはならない。

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