中国の動き、強硬派とどう兼ね合いをつけるか
もちろん、デカップリング慎重論に対する反発も無視できない。
とくに米下院共和党を中心とした対中強硬派は、「かつて米ソ冷戦時代がそうであったように、米国を中心とした西側ブロックの結束を固め、中国と決然と対峙すべきである」との観点から、具体的に①中国とのあらゆる分野にまたがるビジネスに終止符を打つ、②貿易・テクノロジー・金融・人材まで含めた取引を停止する、③中国に対するかつてない経済制裁を科し、中国経済界関係者の入国を制限・禁止する、④中国製品の輸入を規制・禁止し、あるいは厳しい課税措置をとる――などといった過激な主張を展開している。
折も折、去る4日には、米国領空に侵入したまま飛行を続けていた中国の偵察気球が米軍機によって撃墜される事件が発生、こうした対中強硬派を勢いづける恰好となっている。
同事件をめぐっては、気球侵入が初めて公表された2日の時点で、共和党タカ派議員らが「即時撃墜」を政府当局に求めたにもかかわらず、その後48時間以上も偵察飛行を続けさせたことを問題視し、その詳しい経緯について議会で追及する動きも出ているといわれる。
一方の中国政府も、米側が撃墜という強硬措置に出たことで、「さらなる対応をする」として態度を硬化させており、一時的とはいえ、米中外交関係全体に暗雲を投げかける結果となった。
しかし、このまま双方が非難の応酬を続けることは、両国のみならず、世界にとってもけっして望ましいことではない。
ましてや、今回の事件を口実として、米国内で経済・貿易面における極端なデカップリング論が独り歩きするような事態は回避されるべきである。
両国関係安定化のためにかねてから予定されていたブリンケン米国務長官の訪中と習近平国家主席との会談も、事件発生で一時延期となったが、早急な事態収拾と訪中実現が期待される。
米中間の極端な離間はまた、わが国経済にとっても大打撃となることはいうまでもない。