「異次元の少子化対策」の目的は?
筆者はこれまでも「異次元の少子化対策」の目的が明確ではないことを指摘してきたが、財源として「子育て支援連帯基金」が挙げられるに及んで確信できた。政府の少子化対策は異次元であれ、何であれ現行の右肩上がりの人口・経済を前提とした、要するにねずみ講型の社会保障制度の延命に他ならないのだ。
私たちの生活を支えるためにある社会保障制度を支えるために、新たに負担を増やし私たちの生活を危うくしてまでも少子化対策が行われるのだとしたら、本末転倒甚だしい。私たちは社会保障制度の頸木(くびき)なのだろうか。
「異次元の少子化対策」は現在子育てをしているか、これから子育てをする予定がある者だけが恩恵を受けるのであり、それ以外の者は負担を負うだけだ。結局、「異次元の少子化対策」のツケを回されるだけの者は少子化対策そのものに不公平感を抱き、さらには政府、社会保障制度への不信感を募らせ、異次元の少子化対策の恩恵を受けられる者と負担を負うだけの者との間に分断を生むことになる。こうした状態は、長い目で見れば社会保障制度の持続可能性にとって大きなマイナスでしかない。
今年4月に発足するこども家庭庁にそれらしい権限と予算規模を持たせるための「異次元の少子化対策」でも、これまでの少子化対策や社会保障制度改革の失敗を隠ぺいするための「異次元の少子化対策」でもないのであれば、社会保険原理を逸脱する子育て支援連帯基金という無理筋で財源を賄ってまで実行される諸施策によって得られるアウトカム、つまり、実際に少子化の課題がどれほど解決できるのか、しっかりした根拠と見通しを定量的に示すべきだと筆者は思うが、読者の皆さんはどう考えるだろうか。
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