1月22日、産経新聞が『日本のGDP、今年にもドイツに抜かれ4位転落の恐れ』と報じたことが話題になった。筆者は2021年12月に刊行した『アフターメルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社)において日独比較分析をしている。あくまで補論として付した議論ではあるが、刊行後、本編と同じかそれ以上に反響があった。
そうした経緯を踏まえ、今回のニュースは思うところが多々あったので筆者なりの所感を付しておきたい。米国に次いで世界第2位の経済大国として鳴らしていた日本は10年に中国にその座を奪われ、現在は3位が定位置となっている。
しかし、ここにきてドイツに肉薄されているというのが上記報道である。もっとも、この事実は突然降って沸いたわけではない。
昨年10月の国際通貨基金(IMF)世界経済見通し(WEO)の時点では、日本がドイツに抜かれる構図にはなっていないものの、「同率3位」とも言える未来が既に示唆されている。具体的に数字を見ると22年の名目国内総生産(GDP)に関し、日本は4兆3010億ドル、ドイツは4兆310億ドルだ。これが23年になると4兆3660億ドルと4兆1200億ドル、24年は4兆5690億ドルと4兆3770億ドルになる。
日本のドイツに対するリードが22年は+6.7%、23年は+6.0%、24年は+5.3%と縮小していく見通しである。ちなみに、10年前の12年の名目GDPを見ると、日本は6兆2724億ドル、ドイツは3兆5294億ドルで、日本がドイツよりも77%以上も大きかった。僅か10年でこの差が消滅しかかっている。
日本の人口は1億2462万人、ドイツのそれは8336万人であり、日本の方が約1.5倍多い。現時点で日本の名目GDPより上位に位置する中国は14億1196万人、米国は3億3390万人であり、いずれも比較にならないほど人口が多い。しかし、1.5倍の人口を擁しながらドイツに追い抜かれてしまうという事態になれば、それは相応にショッキングな出来事と言える。
経済成長を生み出す要因は①労働力、②資本、③全要素生産性(TFP)だ。③が容易に変わらない以上、①と②で成長率格差は規定されやすく、特に近年の日本は①の縮小が低迷の主因と指摘されてきた。それでも人口が多い分、①で優位にあるはずの日本がドイツに劣後するのはやはり②や③の劣化が著しいという可能性を示唆する。