2024年4月26日(金)

都市vs地方 

2023年2月19日

防げる被害・防ぎ難い被害

 り災者数と死亡数の関係は、大まかに相関するものの、図1のようにバラツキが出てしまう理由として、災害発生から死亡被害までの過程および災害の種類によって大きく異なることが考えられる。

 災害の種類が、台風の襲来や豪雪など事前にある程度予測可能な場合、事前の避難や警告で被害を軽減する努力ができる。しかし、それが効果を持つか否かは、実際の住民が適切な避難行動をとるかどうかにかかっている。

(出所)筆者作成。 写真を拡大

 「この地域ではいままで大きな被害が出たことがないから」や「まさか自分がその災害の被災当事者にならないだろう」と考えてしまうといういわゆる正常性バイアスなどによって、避難が遅れたりすることもありうる。また、高齢者の多い地域などは避難が遅れたり、同程度の災害であっても、死傷の確率が高くなったりすることが考えられる。

 災害の種類が地震の発生のような、予測しがたい場合、地震の襲来前に予め避難することはほぼ不可能である。しかし、家屋内で身を守る行動、家具などの転倒防止措置の状況、耐震建築・補強の状況、中期的には地震保険への加入といった、日ごろからの備えが被害の軽減に役立つといえる。

 トルコでは過去の地震の教訓から、日本と同様レベルの耐震建築基準が設定されていたそうであるが、実際にそれを遵守して建築されている建物の比率が低く、今回の建物倒壊による被害を誘発してしまったそうである。このほか、地震発生後の津波の到来に対しても、迅速な避難行動をとれるか否かが大きく影響することは東日本大震災での教訓である。

 このように考えれば、災害の発生それ自体は防ぎ難く、り災することもやむを得ない場合であっても、その災害からの最終的な被害(死亡)をどれだけ小さくとどめるかについては、さまざまな対応の余地があるといえる。

地域別の自然災害の状況:物的・経済的被害

 次に、地域別の自然災害の状況を物的・経済的な側面から見てみよう。同じく「消防白書」では、住宅の倒壊や経済的な損害も公表されている。ここでは、まず住宅に対する被害を見てみることとする。表4では、地域の住宅10万戸当たりでみた過去5年間の自然災害による全壊の戸数を示している。

(出所)消防庁『消防白書(各年版)』より得た過去5年間(2017年~21年)の全壊住宅の累積値を国土交通省『平成30年住宅・土地統計調査』の2018年の住宅数で除して作成。住宅10万戸当たりのり全壊戸数。 写真を拡大

 この結果を見ると、表2のり災者数のバラツキよりも大きく都道府県間に差があることが分かる。第1位は「平成30年7月集中豪雨」の影響を大きく受けた岡山県である。人的な被害と異なって、住宅の場合は事前に住宅を避難(移転)させるということは不可能なので、災害の影響を大きく受けてしまう。

 図3は住宅の全壊と自然災害死者の関連を散布図にしたものである。住宅10万戸当たりの全壊戸数30以下の地域を取り出して示したものである。これを見ると、住宅全壊の被害の程度に比して人口10万人当りの死者数が相対的に高い地域は、大分県を除いて何れも雪国であることが特徴的である。

(出所)表3及び表4より筆者作成。 写真を拡大

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