地域別の自然災害の状況:人的被害
消防庁『消防白書』により、日本の地域別の自然災害の状況を見ることとする。消防白書では、毎年都道府県別に自然災害とは、暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑り、その他の異常な自然現象からの自然災害による被害状況がとりまとめられている(表2)。ここでは、過去5年間(2017年~21年)の被害状況を累積して集計した結果を見てゆくこととする。
はじめに人的な被害に注目してみることとする。
表2を見ると、地域別に人口10万人あたりの「り災者」数には大きな差があることが分かる。数値の最も大きな福島県と最も小さな愛知県では500倍以上の開きがある。
表2には東日本大震災の直接の被害は含まれていない。しかし、福島県は21年2月と翌年の22年3月にも、に震度6強の地震に見舞われている。特に22年3月の地震では走行中の東北新幹線が脱線するなどの大きな被害が出たことは記憶に新しい。また、2位の岡山県3位の愛媛県は18年の「平成30年7月豪雨」による被害が影響している。
次に同じ人的被害でも、死亡に至るようなより大きな被害についてみることとする。結果は表3に示されている。
表3を見ると、やはり地域別に数値の開きが大きいことがわかる。山梨県は過去5年に限ってみればゼロであるのに対して、広島県は人口10万人当たり5年間で5人相当の値となっている。第46位の東京都と比較しても150倍以上の差である。
もう一つ気づくことは、表2と表3の都道府県の順序が必ずしも同じではないことである。一般的に、り災者数が多ければ、それだけ死者が出る確率も大きいように思われる。しかし、表2で第42位の北海道は、表3では第10と高順位になっている。逆に表2で第12位と比較的高順位であった和歌山県は、表3では第35位に位置づけられている。
この関係を見るために、自然災害によるり災者数と死亡者数の関連を散布図で表したものが図1である。これを見ると、一般的に横軸の人口10万人あたりのり災者数が大きいほど、縦軸の同じ人口10万人当たりの死者数が大きくなっているという大まかな傾向が読み取れる。しかし、り災者数は比較的小さい地域で、結果として死亡者数が高くなっている都道府県が存在していることもわかる。