若者に狙いを定めるオバマ陣営
08年の米大統領選挙においてオバマ陣営は、ネットを駆使して若者との心理的距離を縮め、臨場感と高揚感を向上させることに成功した。例えば、オバマ候補(当時)は、副大統領候補を決めたら、若者を含めた支持者にいち早く知らせると約束をした。08年8月23日、午前3時(東部時間)、携帯電話を登録した若者の支持者にメールが飛び込んだ。
「オバマ連邦上院議員がバイデン連邦上院議員を、私たちの副大統領候補に選んだ。オバマ−バイデンの集会を、午後3時(東部時間)からwww. BarackObama.com で見よう」
朝起きると、携帯電話をみた若者は、オバマ陣営からエキサイティングなメッセージが入っているのに気づく。彼らはオバマ候補を身近な存在に感じ、個人的なコンタクトができている候補だと思うのである。オバマ候補が副大統領候補のバイデン連邦上院議員を紹介した日、筆者は戸別訪問を行っていたある高校で若者の運動員と一緒にいた。若者がオバマ選対本部から受信したメールを、筆者に誇らしげに見せていたのを覚えている。若者はメディア関係者より先に情報を得ていた。
誹謗中傷に対する米国の対策は、どうであろうか。オバマ陣営は、「FIGHT The SMEARS(誹謗中傷をやっつけろ)」というサイトを立ち上げて対策を講じた。サイトの中で、ひとつひとつのうそに対して真実を述べ、うその情報の拡散を阻止した。例えば、オバマ氏のミドルネームが「フセイン」であるために、反オバマの右派は同氏がイスラム教徒であると攻撃した。それに対しオバマ陣営は、サイトを利用してオバマ氏はキリスト教徒であり、イスラム教を信奉したことはないと事実を説明した。
さらに、支持者のネットワークも活用している。オバマ陣営は、有権者が誰の言葉を最も信じるのかを理解していた。友人の言葉である。そこで、同陣営は、ネット上で支持者に真実を広げるように呼びかけ、友人のメールアドレスを紹介してもらい、上記サイトの「うそ・事実」を送信する。もちろん、オバマ陣営から電子メールで送られてきた「うそ・事実」を、支持者が友人に宛てて転送することもできる。
ネット活用で選挙運動を効率化
12年の米大統領選挙においてオバマ陣営は、全国の選挙区にチームリーダーを1人置き、その下に戸別訪問担当、電話による支持要請担当、有権者登録担当、データ入力担当の各キャプテンを配置した。チームリーダーは、それぞれのキャプテンのまとめ役である。彼らは、職業と家族を持ちながら無給で草の根運動に参加していた。