2024年11月22日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年4月4日

激減するサンマ資源

 しかし「捕り放題」のツケが、残念ながら回ってきた。2008年には約35万トンもあった漁獲量が、10年代に急減、21年には1万8000トンと過去最低に落ち込んだ。

さらに回遊パターンも変化、サンマが日本沿岸域に来遊しなくなってきたのである。12年までは日本はほぼ全てのサンマを自国の200カイリ排他的経済水域内で漁獲していたが、15年以降その比率はどんどん少なくなり、21年段階での200カイリ水域の漁獲割合は僅か5%程度に過ぎない。

 サンマは北太平洋を広く回遊し、日本のほか、台湾、中国、韓国、バヌアツ、そしてロシアがこの魚を漁獲している(図2参照)。このうち日本とロシアは自国の200カイリ水域での漁獲が主であったが、台湾、中国など遠洋漁業国が北太平洋公海上に操業し、公海で取り合いになっている。

(出所)NPFC統計基に筆者作成 写真を拡大

遅れたサンマの国際的管理

 サンマの漁獲急減に慌てた日本は15年に設立されたばかりのNPFCで漁獲規制を呼びかけた。NPFCは北太平洋の公海を管轄水域とし、サンマのほか、サバ、イワシ、イカなどわれわれにとって馴染みの深い魚を管理する国際漁業委員会で、加盟国・地域は現在、日本、韓国、中国、台湾、バヌアツ、ロシア、カナダ、米国、欧州連合(EU)の9つとなっている。

 日本のサンマに関する主張を他国に受け入れさせ、漁獲枠を設定するためには、科学的知見が必要となってくる。他の国際漁業委員会と同様、NPFCには科学委員会が設けられており、この下で資源評価が行われたが、遠洋漁業国で公海での規制に消極的な中国の科学者が悲観的な資源評価シナリオに疑義を呈し続け、資源が望ましい水準を割り込んでいるとの合意が科学委員会で得られたのは、2019年になってからだった(大島和浩「NPFCサンマ資源評価経験譚」『ななつの海から : 水産総合研究センター研究開発情報』第17巻(2019年)、8-16頁)。

 NPFCは管轄海域が公海のみにとどまっており、このことは問題の解決を一層難しくしている。回遊する魚にしてみれば、自分が公海にいようが200カイリ水域にいようが関係のない話であり、効果的に漁業を規制するためには公海と200カイリ水域内では整合性のとれたものでなければならない。その一方、漁獲をする国々にしてみれば、自国の取り分は最大限確保したい。

 沿岸国である日本やロシアにすれば条約の適用海域である公海の枠をなるべく減らしたいであろうし、遠洋漁業国である中国や台湾、韓国などにすれば、減らしたいのは沿岸国の取り分ということになる。


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