2024年7月22日(月)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年4月4日

 資源の多寡にかかわらず、毎年毎年漁獲枠を個々に交渉していては、各国の利害が対立するため、なかなか合意が得られない。このため種々の国際漁業委員会では漁獲枠を決めるための枠組み(「漁獲制御ルール」等と呼ばれる)を決め、その後はそこに資源評価結果を入れて自動的に枠を決めてゆくという仕組みが目指されている。

 サンマについては24年にこの採択が目指されているが、そこでは単なる「漁獲規制ごっこ」ではない十分資源保護的なルールを採用する必要がある。但し各国の利害対立が予想されることから、困難な交渉が予想される。

対策急がれるイワシとサバの規制

 サンマの二の舞にならないためには、早め早めの対策が必要である。そうした意味で、急がれるのがサバとイワシの国際的な資源管理である。

 日本はサバを近年30万トン程度漁獲し、イワシは2010年に6万5000トン程度だったものが、現在50万~60万トンと漁獲を大きく伸ばしている。但し双方とも資源に問題がないわけではない。

 水産研究・教育機構の評価によると、太平洋のマサバの漁獲圧は乱獲ぎりぎりの状態であり、ゴマサバは総資源量が望ましいとされる水準を下回り、漁獲圧も高すぎるという意味で二重の乱獲状態にある。太平洋のイワシも漁獲圧が高すぎるという意味で乱獲だと警鐘を鳴らしている (水産研究・教育機構「わが国周辺の水産資源の評価 令和4年度魚種別資源評価 ゴマサバ(太平洋系群) マイワシ(太平洋系群)」)。特にイワシについては公海域で中国が近年漁獲を急激に増加させている(図4参照)。

 サバについても新規加盟のEUが、巨大な底曳網船での新規参入を伺っている。NPFCで進められている資源評価作業を一刻も早く進めて完了させ、資源保護的な漁獲枠を設定する必要があるだろう。

迫られるIUU漁業策強化

 規制を設けたとしても、それが守られなければ意味がない。国際社会では、「違法・無報告・無規制(Illegal, Unreported and Unregulated)」な漁業を英語の頭文字をとって「IUU漁業」と呼び、「国連持続可能な開発目標(SDGs)」でも廃絶が目指されている。

 水産研究・教育機構の推定によると、中国は16年、マサバ太平洋系群を15万~25万トンIUU漁業により漁獲したのではないかとしている(みなと新聞2018年9月28日)。今回のNPFCでもIUU漁業に関して審議が行われ、新たに28隻の船がIUU漁船としてブラックリストに登録される候補として挙げられたが、多くの場合候補に上げられた船の旗国である中国などの「コロナ対策で仕方なかった」等々の言い訳を受け、最終的に新規登録されたのは4隻にとどまった。日本を含め、NPFC加盟国・地域の対応は余りに甘すぎるのではないか。

 IUU漁業対策としては国連食糧農業機関(FAO)の下で採択された「寄港国措置協定」という国際条約が存在している。入港を希望する船舶がIUU漁業に従事したことの十分な証拠を有する場合、入港を拒否するなどの対策を定めており、日本もこれを批准している。

 ところが日本が同協定に基づき入港拒否の対策をとっているのは国際漁業委員会でIUU漁船としてブラックリストに登録された船に限られている 。これでは、北太平洋で怪しげな操業をし、NPFCでも問題ではないかと指摘されたがブラックリスト入りを免れた船が堂々と日本に寄港して水揚げを行うことすら可能になってしまう。

 IUU漁業は、ルールに則って操業するまっとうな漁業者が馬鹿を見る結果となるのみならず、資源を荒廃させる元凶となり得る。IUU漁業の容疑に対し、わが国は今回のように苦しい言い訳と「IUU漁業規制ごっこ」を容認してよいのだろうか。毅然とした対処こそ必要ではないのか。困るのはわが国の漁業者ではないか。

 魚はわれわれにとって貴重な資源であり、将来世代も豊かな海の恵みを享受できるよう持続可能な形で利用してゆかねばならない。そのためには、先手先手を取った資源管理が重要だ。北太平洋の漁業資源を守るため、日本を含めNPFC加盟国・地域は抜本的な規制の強化を行うことが強く求められよう。

 
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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