2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月9日

 フランス国民議会のベンジャマン・ハダッド議員が、台湾に関するマクロン発言は欧州の本音を述べたもので、むしろ自律的な欧州連合(EU)は米国にとってより良いパートナーとなると4月14日付の米国外交専門メディア「フォーリン・ポリシー」で論じている。

(dvids)

 訪中の帰途、マクロン大統領は、台湾を念頭に、欧州は米国に盲目的に従うことはできず、「われわれのものではない危機に巻き込まれる」ことを避けなければならないと述べ、欧米関係者の怒りを招いた。

 彼の発言の趣旨は、EUは国際問題について自らの意見を述べるべきであり、他者によって形成されるべきではないということである。多くの欧州諸国が敢えて言わないことをマクロンが明言したのである。

 米国と欧州が共通の対中政策を求めるのであれば、軍事同様、統一された経済戦略を構築する必要がある。

 バイデン政権がウクライナ支援のために大西洋を越えた強い結束を築いたことは賞賛されるべきだが、中国に対しては成功していない。

 米国が欧州に中国との関係遮断を迫る一方で、米中貿易は2022年に6900億ドルという過去最高を記録した。他方でEUと中国の投資協定は棚上げされている。

 米国は悲観する必要はない。より自律的な欧州は、長期的には米国が中国に対抗する上で有益である。米国が必要とするのは信頼できるパートナーである。マクロンは、欧州の自律を強化し、重要インフラと供給網を保護し、欧州が自らの利益と安全を守るために必要な地政学的手段を発展させることを目指してきた。

 EUは既に、台湾のために発言したリトアニアをいじめようとした中国に対抗して、加盟国を圧力から保護する反強制メカニズムに合意し、EUのチップ法、ネットゼロ産業法、重要原材料法など、欧州の中国への依存度を大幅に下げるための重要な対策を取ってきた。フランスは、華為技術(ファーウェイ)に対して最も制限的な国の一つであり、公務員は、TikTokをダウンロードすることを禁じられている。

 米国は、双方の利害が具体的に一致するところを探す必要がある。米国は 保護主義や欧州の防衛産業の台頭に反対することで欧州を弱体化させるべきではない。

 マクロンは常に、欧州は同盟国米国と中国との間で「など距離」ではないと明言している。自国の利益と世界観を守る団結した欧州は、米国にとって最終的により強固なパートナーになる。

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 この論説は、マクロン派の国民議会議員で国際関係論の研究者でもあるベンジャマン・ハダドが、マクロンの台湾発言の真意を説明しようとするものであるが、マクロンを代弁しているとも見られる。


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