海外の方が「日本の食が安全だ」と評価する理由に、JAの存在を挙げる。JAが農薬使用などの記帳履歴を生産者に義務付けているため、海外の消費者は安心してJA出荷の農産物を購入できる。筆者が1月に訪問したシンガポールのスーパーでも「JA○○」というパッケージの表示がすぐに目に飛び込んできた。
JAさがみの菊地さんも「オンラインショップの普及などJAを通さない農産物が増えている中で、JAでは競合他社に負けないように、ICTを活用して安全性をより担保した流通の仕組みを作っているところ」と語る。
日本でも、スーパーなどに買い物に行く消費者は、「JA○○」とあると、JAが品質や安全性を最低限保証してくれるため、安心して購入しているのではないだろうか。
生産面でも支える
JAは販路の確保だけでなく、生産者の生産性向上にも貢献している。みかんの大産地である静岡県浜松市のJAみっかびでは、21年にAI付き選果場が開設された。新たな選果基準が適用され、みかん生産者は出荷前に自宅で行っていた家庭選果時間を50%近く削減できている。
このJAで、販売と営農指導の音頭をとるのが、JAみっかび柑橘指導課課長の成澤和久さんだ。成澤さんは、「AI選果機によって、みかんの浮き皮、病害虫のチャノキイロアザミウマ、黒点病、生傷などの被害程度が数字として分かるようになった。そのデータを翌年の営農指導にフィードバックし、病害虫防除の徹底などに活かせるようになる」と説明する。
JAのコンピュータには、約700人の生産者の栽培記録が保存され、適正な農薬や肥料の使用など、営農指導員が生産者に指導している。営農指導員が日本有数のみかん産地を支えているのだ。
生産者にとっても重要な存在
こうしたJA職員らの取り組みを現場の生産者はどのように受け止めているのか。約1ヘクタールの施設で10アール当たり40トン近くのトマトを生産する栃木県栃木市の農業生産法人「サンファームオオヤマ」の大山寛会長は「この辺りでは、高軒高(こうのきだか)のトマトハウスにICTが導入され、環境統合システムによって、的確な温度、⽇射量、炭酸ガスなどの管理を可能にした。この革新技術導入によって、1億円近く売り上げる若い生産者も増えてきている。販売については、JAと生産部会が一体で取組んでもらっており、消費者から高い評価を得ている」と話す。
また、「JAの選果場に行けば部会の仲間や、JA営農指導員に会えるので、その時に技術的なことを含めて相談できる。JAは若手生産者の勉強の場を提供してくれるし、生産者は選果場に出荷すると等級別のデータももらえるので、他の生産者と比較可能。これらのデータを使って自分の生産の課題などを見つけることができる」と強調する。