このJAのトマト部会は後継者の育成にも力を入れてきた。部会内のトップレベルの技術者のもとで新規栽培者が1年間研修する独自の「トレーナー制度」を設けて成果を上げるなどの取り組みなどが評価され、農林水産祭園芸部門で天皇杯を受賞している。
大山さんは、「JAと生産者が二人三脚で産地育成に取り組んできたのが大きい」とJAの役割を評価する。
JAを真に評価し、日本農業の改善を
JAは生産者に対して「ゆりかごから墓場まで」サポートする仕組みを作っている。生産者にも消費者にも空気のような存在であるからこそ、その有難みに気づいていないのではないだろうか。批判だけでなく、JAの利点を冷静に見ることも必要なのではないか。
筆者が会ったのは、成功している産地の優秀なJA職員が多いかもしれない。一方で、メールアドレスが組織用で個人のものがなく、メールを送っても反応がない、データがファックスでしか送られてこないなど、デジタル化の遅れは、否定できない。どこの組織にもあることだが、若い営農指導員が、配置されて間もなく他の部署に異動になったり、転職してしまったりする事実も、筆者は目の当たりにしている。JAの組織としての問題点は間違いなく存在している。
ここ2~3年、JA全農がドイツのBASFデジタルファーミング社の衛星画像とAIを活用した「ザルビオフィールドマネージャー」や日本農薬社のAI病害虫雑草診断システム「レイミー」との連携を発表するなど、急速にデジタル化の対応に舵を切っている。JA幹部も従来型のハードだけでなく、ソフトで生産者を支援すべきであることを認識しているのだと思う。
JAも改善すべき点はあることは間違いない。しかし、評価すべき点は、正当に評価し、問題点があれば、生産者だけでなく消費者も冷静に指摘していくことが、難題が多い農業界を、建設的な方向に進めることになるのではないだろうか。
便利で安価な暮らしを求め続ける日本――。これは農業も例外ではない。大量生産・大量消費モデルに支えられ、食べ物はまるで工業製品と化した。このままでは食の均質化はますます進み、価値あるものを生み出す人を〝食べ支える〟ことは困難になる。しかし、農業が持つ新しい価値を生み出そうと奮闘する人は、企業は、確かに存在する。日本の農業をさらに発展させるためには、農業の「多様性」が必要だ。