2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月26日

 4月27日付の韓国中央日報の社説が、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の訪米時に米韓首脳で合意された米韓核抑止の強化を定めた「ワシントン宣言」は今後の実行が重要だと述べている。

(-1001-/Only Flags/justocker/Lasha Kilasonia/gettyimages)

 尹錫悦とバイデンは、ワシントンで首脳会談を開催し、北朝鮮の脅威増大に対して核の拡大抑止を強化していく「ワシントン宣言」を発出した。

 ワシントン宣言の主要点は、(1)北大西洋条約機構(NATO)核計画グループに倣った米韓核協議グループ(NCG)の設置、(2)原子力潜水艦や戦略爆撃機など米国の戦略的アセット(注:艦船、航空機など)の韓国への定期的展開、(3)韓国による核拡散防止条約(NPT)の順守という三点である。

 多くの韓国人は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)により犠牲になる状況下で、米国は本当に韓国を守ってくれるのだろうかと心配している。今回、米国は、米国がいかに主要な緊急事態へ対応し準備するかについて「追加的な考え方」を韓国と共有すると述べた。核の傘の信頼性を確保するために、米国は原子力空母や潜水艦などの戦略アセットを韓国や周辺地域に展開する。多くの演習などは、北朝鮮の挑発を阻止する防衛力を一層向上させるだろう。

 一方、米国はNPT上の義務に対する韓国の約束を取り付けた。韓国では世論調査で6割が韓国の核保有を支持している。しかし米国は、いかなる核兵器についても韓国に再展開されることはないと明らかにした。

 抑止の強化には意味があるが、それが本当に頼りになるかどうかは見てみないと分からない。その確認のためには実務者間の今後の行動が必要だ。また両国は、合意が単なる合意で終わらないように合同演習を継続せねばならない。力を誇示するだけでは平和は確保されない。米韓両国は、北朝鮮を交渉の席に着かせるための努力を継続せねばならない。

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 この社説は、尹錫悦による米韓同盟結成70周年を記念する国賓での訪米の結果につき、米国の拡大抑止が強化されたとして概ね前向きに評価する。今回訪米の結果(米韓核協議グループの設置、原潜などの寄港定期化、韓国によるNPT順守確認)は、北朝鮮対応のみならず、インド太平洋戦略や日韓関係にも良い効果を持つだろう。

 他方、この社説には、訪米成果への高揚感は見られない。今後宣言実行のための行動が重要だと指摘する。それは正しい。高揚感欠如のもうひとつの理由は、NPT順守を再確認したこと、つまり韓国の核保有が封じられたことに対する左右両派にわたる微妙な国民感情があるのだろう。


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