人々は、ゾンビ企業にいるより生産性の高い企業に移った方がより高い賃金を得られる。こうなれば、ゾンビ企業は存続できず、かつ、失業者も生まれない。
矛盾する政府の方針と政策
こう考えると、ゾンビ企業は大した問題ではなく、雇用拡大こそが問題だと、筆者は思うのだが、政府は、企業の退出を政策的に促進することに熱心なようだ。最新の「骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2023)」(2023年6月16日、閣議決定)でも、「企業経営者に退出希望がある場合の早期相談体制の構築など、退出の円滑化を図ることにより、新たな産業構造への転換を促していく」とある。
具体的には、経営者個人の債務保証で企業をたたむにたためない経営者を助けることに重点が置かれているようだ。債務保証で丸裸にされるのは気の毒だから、何らかの対策があった方が良いが、これくらいのことでゾンビ企業を減らして経済が良くなるとは到底考えられない。
また同時に、政府が中小企業へのゼロゼロ融資に熱心なのも分からない。ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業を支援するための、実質無利子、無担保の融資のことである。コロナ対策の緊急処置でやむを得ないことだったとも思うが、利益が上がらず金利をやっと払っているゾンビ企業が大問題という認識とは矛盾する。
さらに、政府が事業承継に熱心なのも分からない。韓国財閥の跡目争いを見ても、後継者になることが美味しいなら、妻愛人兄弟姉妹婿嫁、入り乱れて争っても事業承継したいはずだ(これは筆者が韓流ドラマを見過ぎなのかもしれないが)。
後継者がいないとは、それだけの利益がない企業だから、無理に存続させることもないゾンビ企業に近いのではないか。政府のしていることは、いつでも矛盾していて良く分からないことばかりだ。