Wedge REPORT

2013年8月19日

»著者プロフィール
著者
閉じる

勝川俊雄 (かつかわ・としお)

東京海洋大学准教授

1995年東京大学農学部水産学科卒。97年同大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2002年同大学大学院農学生命科学研究科博士号取得(論文博士)。三重大学生物資源学部准教授等を経て15年4月より現職。

 日本のイカ釣り漁業は、強力な集魚灯をつかうので、燃油高騰の影響を受けやすい。イカを釣るだけなら、それほど多くの光量は必要がない。昔は、ローソクや50㍗の裸電球で、イカを釣っていた。現在の過剰な光量は、漁業者間のイカの争奪戦の結果である。誰かが抜け駆けして光量を増やすと、イカがそっちに集まってしまうので、他の漁業者も追従せざるを得ないのだ。

 個別漁獲枠制度を導入すれば、光量を増やしても、自分が水揚げできるイカは増えない。漁業者は、経費削減のため、必要最低限の光量まで落とすはずである。現在の2~4割の光量が適正水準であると言われており、大幅な経営改善が期待できる。

 07年に燃油価格が高騰した当時、豪州の漁業管理当局のトップから、漁業政策について話を聞く機会を得た。豪州では、個別漁獲枠制度を規模の大きな漁業から導入している最中であった。燃油補填の要求がでてきたのは、個別漁獲枠制度を導入していない一部の漁業のみであった。豪州政府は、公的資金による燃油代の補填はせずに、個別漁獲枠制度を前倒しで導入して、燃油高騰を乗り切る方針を打ち出した。

 漁業者間の競争を放置したまま、補助金によるその場しのぎをした日本では、燃油の価格が上がるたびに、補助金の要求が繰り返されている。日本政府も、補助金による安易な問題先送りを繰り返すのではなく、豪州政府の問題解決型の姿勢を見習ってほしい。

日本が資源管理をしなかった理由

 麻生政権時代に、規制改革会議によって、個別漁獲枠制度の導入が議論されたことがあった。それに対する水産庁の回答は、次のようなものであった。

(1)日本では、漁業者による自主的なきめ細かい操業規制が行われており、公的機関が規制を導入して、漁獲競争を緩和する必要がない
(2)管理コストがかかるので難しい
(詳細は「http://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_yuusiki/pdf/siryo_20.pdf」参照)

 つまり、「現状でも問題がないし、お金もかかるから、やりたくない」ということだ。

 日本全国、どこの浜に行っても、魚が獲れなくなった話ばかりである。水産庁が漁業者に実施したアンケートでも、「資源が減少している」と答えた漁業者が9割であった。サバに限らず、クロマグロや多くの魚種が、適正サイズになる前に大半が漁獲されている。非生産的な稚魚の奪い合いを、何十年も放置しておいて、「競争を緩和する必要がない」と開き直るのは、あまりにも無責任である。

 グラフは、主に先進国によって構成されるOECD(経済協力開発機構)の漁業補助金の金額を比較したものである。日本は、2位の米国、3位のEU全体を大きく引き離して、ダントツで1位である。これだけ多くの公的資金が投じられているのに、他国がやっていることが、なぜできないのだろうか。日本の場合は、予算が足りないのではなく、使い方に問題があるのだろう。

 こうした漁業問題の詳細は、『漁業という日本の問題』(NTT出版)にまとめてあるので、興味のある方はご参照いただきたい。

関連記事

新着記事

»もっと見る