問題は今回の反乱失敗の影響が中東・アフリカ諸国を大きく揺さぶるのかどうかだろう。結論から言えば、ロシアにとってこれら地域でのワグネルの存在はロシアの戦略的国益に多大に寄与しており、故にプーチン政権がワグネルの活動を縮小する可能性は小さいのではないか。
しかし、混乱が生じることは否めない。ロシア軍がワグネルを吸収するという話も出ているが、米専門誌によると、シリアではワグネル戦闘員の一部が駐留ロシア軍に拘束され始めている。しかもロシア副外相が6月26日にアサド・シリア大統領と会談、軍の同意なしにワグネル戦闘員を国外に出国させないよう要請したとされ、ワグネル側には動揺が広がっているようだ。
米露の直接衝突の懸念高まる
米軍関係者らによると、ワグネルがロシア軍に統合されると、シリアでは〝緩衝勢力〟がいなくなり、ロシア軍と米軍が直接衝突するリスクが高まるのではないかという。ロシア軍機による米軍支配空域の侵犯が1日3、4回にも上っており、米側は懸念を深めている。
しかし、バイデン米政権はワグネル反乱の混乱について、中東・アフリカ地域で米国が存在感を復活させるための「巻き返しの好機」と見なしており、米露の対決が今後、エスカレートする恐れがありそうだ。
ワグネルの反乱など、ロシア情勢を伝える「プーチンのロシア」の記事はこちら。