子育てのコストはざっと1億円ということになる。しかも、大卒の女性比率が高まっていくと、子育てのコストは平均でもますます高くなっていく。
児童手当を1億円とする訳にはいかない。毎年80万人の子どもが生まれて、成人になるまで1億円の手当てを払うとすると年間の必要予算は80兆円(80万人×1億円)となる。なお、18歳まで1億の児童手当とは毎月4万6300円(1億÷18年間÷12か月)の手当となる。
これはまさに異次元だが、そんな政策は非現実的だから、子どもを増やすことは難しい。しかも、1億円の児童手当をもらった女性は正規での雇用を止めてパートで働くことになる。これは国内総生産(GDP)が減り、税収も減るということだ。そもそも、自ら働きたい女性にお金を配って働かないように引き留めることになる。
先進国では女性が働いても子どもが生まれている
こう指摘すると、経済協力開発機構(OECD)諸国では、女性の労働力率が高い国ほど出生率が高い、という反論があるだろう。確かに、OECDのデータによると、1970年時点では、女性の労働力率の高い国ほど出生率が低いという傾向にあったのに対し、2000年時点では、女性の労働力率が高い国ほど出生率が高いという傾向がみられるという。
そして、この背景としては、30年の間に、子どもを産み育てることと仕事の両立が可能な社会環境を整えてきた国であり、それらの国においては、女性の労働力率を伸ばしながら出生率も回復してきているということがあるという(内閣府男女共同参画局「平成18年版男女共同参画白書(2016年)」第1-3-8図 OECD加盟24か国における女性労働力率と合計特殊出生率)。
だから政府も、育児休業制度で、休職中の支援をしたり、休業後の職場復帰をしやすくしたりしている。また、保育所の増設に努め、待機児童をほぼ解消したという反論があるだろう。しかし、子どもはある期間だけ面倒を見れば良いというものでもない。小学生になっても低学年ならすぐ家に帰ってきてしまう。熱を出したら保育園にも学校にも行けない。
政府の作る施策は平均的な人々の平均的な活動に対応したものとなる。また、急な残業などがないように働き方改革を進めるというのだが、世の中はいつ何が起きるか分からない。むしろ、急な対応に対処できるシステムを作った方が良いのではないか。