2024年5月6日(月)

MANGAの道は世界に通ず

2023年9月2日

『推しの子』(集英社)

 今年もまた、歴史的名作となるスマッシュヒットが生まれた。『かぐや様は告らせたい』(集英社)でブレイクした、天才原作者の赤坂アカ、『クズの本懐』(スクウェア・エニックス)などで着実に実績を積み上げた横槍メンゴ、この両名による原作&作画という、劇的なタッグで始まった本作品。『推しの子』(集英社)である。

 綿密なプランニングにより本年アニメ化され、なんと初回の放送時間は90分! 全体の前日譚となる、コミックス第1巻の内容を、丸々全部放映したい」という想いから実現した長尺だ。これにより完璧な構成となったアニメ第一話は、ぜひ皆様にも目を通していただきたい。

 そこに付随して公開された、若手トップ音楽ユニットのYOASOBIによる主題歌『アイドル』は、リリースわずか6日で2000万回再生を記録。

 ビルボードのグローバルチャート(米国を除く)でもなんと「世界5位」を記録! 日本のアニメの世界的人気の高まりと同時に、本作品の圧倒的な広がりを感じさせることとなった。

 これだけヒットした理由の一つは、原作者の赤坂アカ氏による、斬新かつインパクトの強いプロットによるものだ。

 以下、アニメ第1話のネタバレとなるがご容赦願いたい。

前世の記憶を持ったままで「転生」

 主人公となる「ルビー」「アクア」の兄妹は、実は前世で、病気などにより若くして命を落としていた。そしてそのまま、今をときめくトップアイドル「アイ」の子供として、前世の記憶を持ったままで「転生」するのが物語の始まりだ。

 この2人は元々、「アイ」を最推しとする生粋のアイドルオタクだったため、劇的な転生だったと初めは喜ぶ。前世の記憶があることを母親にも隠しながら、円満な生活を過ごしていく。

 しかしアイは、実は施設育ちであり、誰かに愛されたことも愛したこともなく、愛とは何かを知らずに生きてきたという。全てを嘘と演技で塗り固め、偽りの愛をファンたちに届けていくアイ。

 そんなある時、自宅にストーカーが押し入り、なんとナイフで刺されてアイは致命傷を負う。最期の瞬間、アイは力を振り絞り、「愛してる。これは絶対に嘘じゃない」と2人の子供に伝え、命を落とす。

 このシーンを巧みに描写した、前述のYOASOBIによるMV「アイドル」は一見に値するため、ぜひ皆様にご覧いただきたいと切望する。

 さて、かたやルビーとアクアの2人は、この犯人の黒幕を追うため、アイと同じく芸能界に入ろうと決心する。高校生まで育ち、着実に芸能界でステップアップしながら真犯人に辿り着いていく……というのが大筋の流れだ。

 上述の前日譚があまりに強烈なため、原作連載時にも大いに話題となり、着実にファンを増やしていった本作品。


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