2024年5月6日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月2日

 台湾の頼清徳副総統(2024年総統選における民進党の総統候補)が、2023年7月4日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)への寄稿で、台湾海峡の平和を維持するための4つの柱を提唱している。

(Pontuse/gettyimages)

 医師だった私(頼)が、台湾の民主主義を守る決心をしたのは、27年前のことだった。1996年の台湾海峡危機は、初めて行われる自由選挙となる総統選挙の最中に起きた。北京は、権威主義的傾向の候補を好んだ。そうした候補者たちは大敗を喫した。台湾の民主主義はそれ以来繁栄しているが、歴史は繰り返すことがある。

 近年、台湾海峡の平和を支持する声が世界的に噴出している。ウクライナ侵攻と世界的な権威主義の高まりは、国際社会に民主主義の脆弱さを認識させた。

 私は、われわれが直面する課題を明確にし、地域の継続的な安定を確保する平和のための4本柱の計画を実行する。

 第一に、台湾の抑止力を強化しなければならない。蔡英文総統の下、われわれは防衛予算を増額し、徴兵制と予備役制度を改革してきた。私は、非対称戦闘部隊への転換も促進し、パートナー国や同盟国との間で、訓練、戦力再編、民間防衛、情報共有など、協力を強化する。

 第二に、経済安全保障は国家安全保障である。台湾はハイテク大国となった。しかし、中国への貿易依存は、脆弱性を生み出した。われわれは、貿易の多様化を促進しつつ、安全な供給網を育成しなければならない。

 第三の柱は、世界中の民主国家とのパートナーシップの構築である。今年、台湾は、アジアから初めて医療チームをウクライナに派遣し、戦傷者や住民を支援した。過去最多の国会議員、公式代表団などが台湾を訪問した。

 第四の柱は、安定的で原則に基づく両岸関係である。最近、中国は、「1992年コンセンサス」と「一つの中国」の枠組みに固執し、交流を断絶している。台湾、日本、南シナ海では、人民解放軍の威圧的な行動により、軍事的緊張が高まっている。私は両岸の現状維持を支持する。

 1996年以来、多くのことが変化したが、変わっていないことも多い。人民解放軍の戦闘機と艦艇は、われわれの民主的選挙に影響を与えるべく台湾周辺を動き続けている。27年前と同様、私は、常に台湾人と国際社会の平和と安定のために働く。

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 来年1月の総統選挙の民進党候補である現副総統・頼清徳がWSJに寄稿し、自ら立候補する理由を論じた寄稿文である。「自分は台湾の民主主義を守るために行動する」と明言している。

 目下、来年1月の台湾の総統選挙は、与党民進党・頼清徳、国民党・候友誼、民衆党・柯文哲の三つ巴の対立となっている。


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