8月22日、「太平洋マグロの資源管理に関する会議」で、水産庁の幹部が「メジマグロを食べるのを控えるように」という異例の呼びかけを行なった。メジマグロは水産庁が資源管理を行っているクロマグロの子どもだ。今回の呼びかけの目的は、過去最低水準に落ち込んでいるクロマグロの資源量を回復させるために、その子どもであるメジマグロの資源を保持するためだ。
かつて日本は世界一の水産大国であったが、現在は衰退の一途を辿っている。しかし、今も世界一の魚の消費国であり、多くの国民が魚を好んで食べている日本。今その魚が日本の近海から、そして私たちの食卓から消えようとしている。それは一体なぜなのか・・・・・・。
WEDGE本誌やWEDGE Infinityの連載「日本の漁業は崖っぷち」でお馴染みの片野歩氏が、このたび『魚はどこに消えた?』(小社刊)を上梓した。刊行を機に、片野氏に日本の水産業の実態について伺った。
――早速ですが、日本の水産業の実態はそんなに危機的な状況なのでしょうか?
(片野 歩、ウェッジ社)
片野歩氏(以下、片野氏):はい、このままでは日本の水産業は本当にダメになります。土用の丑の日が近づくと、ここ数年では必ずと言っていいほどウナギの稚魚の価格高騰のニュースを耳にしますよね。最近は、マグロやサンマの価格高騰も懸念されています。実はこれらの魚に限らず、日本の近海から魚が減っているのをご存知でしょうか。
原因は、資源管理がされていないことにあります。日本は、自由競争で早いもの勝ちの漁業スタイルです。このままでは、資源は獲り尽くされてしまうし、資源がなくなれば漁業者も職を失うことになるでしょう。
――では、どのようにすれば資源管理ができるのでしょうか?
片野氏:やはり、国がきちんとした政策を作ることです。まずは早急に個別割当(魚ごとに決まっている漁獲枠を漁業者ごとに個別に割り当てる)制度を導入することが必要だと思います。この制度は海外の水産業先進国では既に取り入れられ、かつ成功も収めています。詳しくは本書をご覧いただきたいと思いますが、日本もこの制度をきちんと運用することが出来れば、漁業者は儲かり、資源も維持できるのです。