2024年5月17日(金)

Wedge OPINION

2023年8月10日

 記者会見の場などに出ることで、自らだけでなく、プライバシーに関する質問を浴びせられることを警戒しているのかもしれない。実際、内閣官房の担当者は、「家族の心身のケアが必要になったため中断している」と説明している。

 民間人ならともかく、内閣官房副長官は政府首脳、官邸の大番頭だ。家族を守ることはもちろん重要だろう。しかし、自らのプライバシーだけを優先させるのではなく、日本国民、自らに票を投じてくれた有権者に対する説明も尽くすべきだろう。

 官邸が木原氏にこれ以上の説明を求めないとしていることも、官邸ぐるみでやましいことがあるのではないかと、あらぬ疑いを招きかねない。

岸田首相は何も語らず

 野党は攻勢を強めている。立憲民主党は「経緯は不明だが事実なら恐ろしいことだ」(泉健太代表)として、木原氏に公開質問状を送りつけた。

 自民党内からも説明を求める声が出始めている。うるさ型で知られる西田昌司参院議員は木原氏を擁護しながらも「官房副長官で内閣のスポークスマンです。スポークスマンが自分の家族に疑いがかけられていることに対してスポークスしなかったら仕事にならない。堂々と会見をやったらいいんです。本当に圧力をかけたのか、木原さんが率直に語ればと思いますよ」(AERA dot. 8月2日)と強く進めている。まさに正論だろう。 

 木原問題の今後はどういう展開になるのか。

 予測は難しいが、警察トップの発言などから推測すれば、新しい明確な証拠が発見されたり、「犯人」が名乗りでたりしない限り、捜査が再開されることはないだろう。

 問題は政治的な側面だ。

 岸田首相ら政権幹部が、一週刊誌の記事にいちいち取り合う必要はない、「人のうわさも七十五日」などとと考えているのであれば、甘いというべきだろう。

 国民はシロかクロか、わかりやすい問題に関心を持つ。マイナンバーカードの混乱に加え、木原疑惑と秋本議員の贈収賄容疑をどう乗り切るか。処理を誤れば、国民の心が一気に離れかねない。まさに危機管理能力が問われる時だろう。

 それにしても、この問題での岸田首相の言葉が国民にほとんど伝わってこないことに首をかしげざるを得ない。責められるべきは自ら口を開かない首相か、それとも質問をぶつけないメディアか。木原氏の行動と同じくらい不思議というほかはない。

   
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