2024年12月7日(土)

バイデンのアメリカ

2023年8月17日

 勤務者1人当たりの「生産性」についても、「出勤より在宅のほうが高い」と回答した人が過半数を占めているといわれる。

経営者にくすぶる不満

 しかし、経営サイドから見た場合、話は別だ。

 今年に入り、ハイテク企業はじめ名だたる大企業の間で、従業員に職場復帰を義務付ける動きが目立ち始めている。

 「Facebook(フェイスブック)」や「Instagram(インスタグラム)」などからなる「Meta」社は去る6月、全従業員に対し、今年9月から「毎週最低3日の出勤開始」を通告、それ以来、各オフィスの人事部長が社員の自宅に電話やメールを入れ、会社方針の徹底を呼びかけるなど対応に追われている。

 「Amazon(アマゾン)」「Disney(ディズニー)」「Starbucks(スターバックス)」「Telsa(テスラ)」「Google(グーグル)」などはすでに、今年初めから軒並み同様措置を打ち出しており、経済界全体でも全面的リモートワークには否定的ムードが支配的になりつつある。

 コロナの世界拡大が懸念され始めた2020年に公表された「Harvard Business Review(ハーバードビジネスレビュー)」研究報告で、大手企業経営者の38%が「自宅勤務者のほうが通勤者にくらべ実績面で劣る」と回答したことなどが背景にある。

 また、この関連で、今年5月には、従業員2000人を擁するマーケティング会社「Clearlink」(本社ユタ州ソールトレーク)の社長が、自宅勤務を続ける社員に出社を呼びかけたメールの中で「諸君の中で30%近くが、まる1カ月も1度もラップトップを開かなかったことを示すデータがある。マネジャーも含めそのほとんどがフルタイム自宅勤務者だ」と〝警告〟したことが電子メディアで暴露され、話題を広げた。

 こうした自宅勤務者の〝見えざる怠慢〟を危惧する経営者はかなりの数に上っているとみられ、中には、本社人事部が自宅での社員のパソコン作業実態を把握するための「監視用ソフト」の導入に踏み切ったところも少なくない。

 過激な言動で知られるテスラ社最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏などは、「在宅勤務者は仕事のふりをしていたり、適当に会社に電話を入れたりしてさぼっている人間が多い」「わが社は、出勤に応じなければ、躊躇せずやめてもらう」と公言してはばからない。

 そして実際に、マスク氏が経営する「X(旧Twitter)」ほかいくつかのIT関連企業では、社員向け通達の中で「期限内に出社しない場合、解雇」の方針を明示する動きも出ている。


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