2024年5月20日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月22日

 この社説は、ロシアのショイグ国防相が朝鮮戦争休戦70周年記念行事(7月27日)出席のために訪朝したことに関連して、金正恩自らがショイグを武器展示会に案内するなど破格の待遇をしたことから、露朝間で危険な武器取引が行われる疑念があると指摘する。

 具体的には、ロシアが「北朝鮮から従来の弾薬やドローンを受け取り、その代わりに核弾頭の小型化、大気圏再突入技術、宇宙打ち上げ車両などの高度な兵器技術を提供することが考えられる」と警戒する。ロシアは、ウクライナ戦争のための武器・弾薬やドローンの不足をきたしていると言われており、かかる露朝間の取引は大いにあり得ることである。

 7月27日の北朝鮮記念行事には、中国からは全人代常務委員会副委員長の李鴻忠が、ロシアからはショイグが出席した。金正恩は、正に過去の指導者がやってきたように大国の中露を相手に強かな外交を展開したということであろう。小国といえども状況によっては大国に大きな影響力を発揮しうる。中国に対しては、7月25日に金正恩自ら「中国人民志願軍烈士陵院」を訪れ、「戦争中に米軍の爆撃で死亡した毛沢東の息子、毛岸英」の墓に献花し、中国に必要なメッセージを送った。

金正恩自らがショイグを案内

 しかし今回注目されるのは、ショイグの訪朝だった。ウクライナ戦争遂行責任者が数日にわたってモスクワを空けるのは異例であり、ショイグ派遣には一定の目的があったのだろう。

 それは正に「破格的」で、「尋常ではない」訪問だった。それも7月26日、金正恩は、ショイグと共に「武装装備展示会-2023」を訪問し、自ら案内したという。金正恩にも武器供与と引き換えに武器技術の入手という目的があったということは大いに考えられる。

 社説原文は、「お金を受け取って武器を売るか、または無償で武器を提供する代わりに、軍事技術を提供してほしいというシグナルとも解釈できる場面だ」と述べる。8月3日、米国家安全保障会議(NSC)のカービー広報官は、「われわれの情報によると、ロシアは北朝鮮の砲弾購入などを通じ、北朝鮮との軍事的協力を増やそうとしている」と述べ、ショイグが北朝鮮製兵器の輸入問題を話し合った可能性があることに懸念を表明した。

   
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