2024年11月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月29日

 英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、8月7日付の論説‘Why Joe Biden is the heir to Trump’で、バイデン政権は貿易・グローバリゼーション・中国に関してトランプ政権の内外政策を継承し、それを足場に政策を積み上げたことを指摘して、バイデンはトランプの継承者であると論じている。要旨は次の通り。

(danielfela/FeelPic/gettyimages・写真:AP/アフロ)

 トランプが大統領として米国の内外政策の歴史的変動を引き起こしたことは間違いない。大統領職を歴史的なものとするのは、過去との過激な決別、そして、その結果と前提が政敵によって受容され吸収されることである。

 トランプは過去40年のグローバリゼーション推進のコンセンサスを否認した。選挙戦でトランプは米国を笑いものにし侵害していると中国を非難した。

 就任初日に、トランプは環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。2017年には世界貿易機関(WTO)の上級委員会の新たな委員の任命を阻止することによってWTOの機能を妨害する意図的な努力を行った。トランプの通商代表だったライトハイザーは中国に大量の関税を課した。トランプは北米自由貿易協定(NAFTA)を交渉し直し、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」となった。これはすべて産業の雇用を米国に取り戻すとの名目で正当化された。

 中国との新たなライバル関係は地政学的なものでもあった。2017年に公表されたトランプ政権の国家安全保障戦略は、中国とロシアとの「大国間競争」をそのアプローチの目玉とした。

 バイデン政権は、トランプ時代のほとんどの政策を維持し、更にはこれらの政策を足場に更なる政策を積み上げることさえした。TPPに再度参加しようとはせず、WTOの上級委員会の妨害を続けている。政権の当局者は内々に中国をWTOに加盟させたのは間違いだったといっている。中国に対するトランプの関税は依然課せられたままである。

 また、バイデン政権は中国との「大国間競争」のコンセプトを引き継ぎ、中国を米国にとって「最も重大な」地政学的挑戦と言っている。バイデノミクスは、米国の工業の復活と中間層の再建というトランプ流の願望が動機となっている。


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