2024年5月19日(日)

Wedge REPORT

2023年8月30日

 戦後約80年の間に学校教育は、サービス業化が進むとともに業務内容も雪だるま式に肥大化した。筆者は40年近くを教員として働いてきたが、その間に免許更新制、学校評価、教員評価、地域防災対策、インクルーシブ教育など、業務に業務を重ねるビルド&ビルドの連続であった。教育内容の高度化が求められる中でも組織体制は40年前とほぼ変わらない、いや国庫負担が減らされ非正規職員の割合が増加するなど弱体化しているにも関わらずである。

 結果、学校は業務の境界線を失い、同時に責任だけが増大した。

 学校が教育のみならず福祉まで担っていることはコロナ禍が証明した。日本は学校が稼働しなければ立ちゆかない社会になった。公立学校教員に残業代を支払わないことを事実上定めた教職員給与特別措置法(給特法)の後押しもあって学校教育はコスパ最強トータルサービスになり、子ども達の全てについて責任を負うことになったのである。当然これは学校のブラック化に繋がっている。

 筆者は保護者に言われたことがある。「子どもは家にいる時間より学校にいる時間の方が長い。だから子どもの責任は親よりも学校にある」。こうした認識は今や社会的なコンセンサスになっており、その圧力が学校に会見を開かせたと考えるのは筆者だけだろうか。

しわ寄せは子どもたちに

 経済協力開発機構(OECD)は2018年に公表した報告書の中で、日本の教育制度について、「子どもたちに包括的(全人的)な教育を効果的に行っている」「しかし、その代償として、教員は極度の長時間労働と高度な責任を背負わされている」と本質を突いている。世界で高い評価を得ていると言うことは、どこの国もやれないことを無理矢理やっているということに他ならない。

 筆者は現役時代から「学校は既に破綻している」と強いメッセージを出すとともに、部活動の地域移行に取り組んできた。それは学校だけでなく地域社会全体で子ども達を支えようとする試みだ。今、その波は全国に広がっている。

 疲弊した学校の状況は結局子ども達にマイナスとなって還っていく。そうさせないために学校が全てを背負う日本の教育の在り方を改革すべき時が来ているのは間違いない。

参考文献
福岡・小6女児3人はなぜ溺れたのか 「隠れため池」を緊急検証する(yahooニュース記事)
教職研修資料(教育開発研究所)
新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)【概要】 (平成31年1月25日中央教育審議会)

   
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